VALUと女子高生から見る、音楽ビジネスのリアル

11月30日(木)から12月2日(土)の3日間に渡り、渋谷ヒカリエを中心に開催された複合型音楽イベント「Tokyo Dance Music Event(TDME)」
オランダの大手レーベルSPINNIN' SESSIONSによる日本初のオフィシャルイベントや、テクノポップのパイオニアであるDaniel Millerと石野卓球の共演などのライブで盛り上がりを見せた中、Z TOKYOは2名のトークセッション登壇者に注目。

一人目は、「ブロックチェーン技術は音楽業界にどのような変革をもたらすのか?」について語った、株式会社VALUの代表取締役の小川晃平氏。
もう一人は株式会社ドリコムでディレクターを務める吉田優華子氏。「ティーン世代に向けた音楽マーケティングとは?」というテーマで登壇した。

話題のブロックチェーンを応用し、アーティストとファンの双方にメリットをもたらすVALUと、いつの時代も流行の中心としてビジネスにも影響を与える女子高生。それらの実態と変化する音楽ビジネスの現在地を探るため、小川氏と吉田氏のそれぞれに個別取材を行った。

VALU代表の小川氏が語る、アーティストとファンの新たな関係

小川晃平氏は株式会社VALUの代表取締役であり、同社が運営するサービス「VALU」の開発者。2011年にグリーに入社後、アメリカ・シリコンバレーの支社でエンジニアとして勤め、2014年にフリーランスに。その際にビットコインに出会い、開発を始め、2017年5月にVALUベータ版をリリースした。

今回は、VALUが現状はどのように使われ、アーティストとファンの双方にどのような影響を与えているかについて伺った。
(※VALUのサービスについての概要や仕組みについては今回は割愛する)

――まず、どのような方針でVALUを運営しているのかを教えてください。

小川:自分もVALUのいちユーザーですが、自身の価値をどうやって伸ばすかを常々考えて使っています。運営者としては、サービスを使っているアーティストたちが実際に売れて、その人の価値が変化する事例を早く生み出したい。
これまでの市場に比べると、例えば音楽業界だと著作権を管理する組織による中抜きがない分、アーティストにはメリットがあると考えています。
ファンも、VA(VALU上で発行、売買されるトレーディングカード)を持っているから単なるファンじゃなく、応援する人が売れると利益が出る可能性があるので、応援の勢いも強くなる。
そうやって、評価経済の中で個人のエンパワーメントを強めていきたいです。

ファンの心を掴むためにはストーリーが重要

――ファンは応援の仕方だけでなく心理状況も変わるのでしょうか?

小川:例えば、インディーのバンドを応援している時、これまでだったらバンドが売れると少し悲しくなる心理があったと思いますが、それがなくなるんじゃないですかね。
VAを持っているとそのア-ティストが売れた時はVAの価値も上がるので、ファンにも見返りがある。好きという気持ちと資本関係が少なからず相互に影響するみたいです。
その上、アーティストとファンはインタラクティブな関係を取りやすい。ファンの方から「こうすればいいんじゃない?」って考えてアプローチができるので、「自分がここまで成長させた!」という感覚があります。VA を保持することは、アーティストの分身を持つみたいな感じだと思います。

――そうなると、アーティスト側も売り出し方、売れ方が変わってくるのではないでしょうか。

小川:メディアなどを使ってストーリーを作ることが重要になると思います。
例えば、アヴィーチーがMVのメイキングを作って話題になりましたが、MVに先行して映像を作ったことで、ファンは強く感情移入ができるんです。あれだけ頑張ってたんだからって。
もちろん、アーティストの本質的な才能はこれまで同様重要ですが、ストーリーがある方がファンの心をより掴めるというのはほぼ確信しています。

吉田氏が語る、女子高生のリアルな音楽事情

新たなサービスによりアーティストとファンのあり方が変わりつつある中で、その中心にいるのは若い世代。中でも、常に独自のカルチャーを生み出し続ける女子高生の生態について、吉田氏に伺った。

吉田優華子氏は2013年に株式会社ドリコムに入社後、翌年2014年に同社子会社の株式会社Ignomの社長に就任。現在はドリコムでディレクターとして位置情報連動 街あるきアプリ「PASS」を担当している。
また、休日には原宿へ出向き女子高生に街頭インタビューを取る「10代の流行りが1分動画でわかる!放課後トーーク」」という活動も行い、公私共に女子高生のリアルな情報に常に接している。

――街頭インタビューではどのようなことを聞いてるんですか?

吉田:音楽のことだけじゃなくエンタメ全般のことを聞いています。どんな音楽を聴いてるのかとか、学校で何が流行ってるのかとか。あとは、お金の使い方や将来の夢なども聞いています。

――今の女子高生はどんな音楽をどうやって聴いてるんですか?

吉田:ジャンルとしてはK-POP 、J-POPの人気が高く、次いでアニソン、洋楽ですね。K-POPのMVって女の子の好きが凝縮したようなのが多いから、そういうのがウケるんじゃないですかね。ほとんどはYouTubeきっかけで好きになってるみたいです。
音楽の接し方としては、YouTubeを見る時間が多い。関連動画とかYouTuberのチャンネルで使われてたり紹介された音楽をディグって、好きになったアーティストは無料の音楽アプリで聴いてます。

――無料なんですね……。CDを買わないのは想像できるんですが、ダウンロードもしないんですか?

吉田:無料音楽アプリが多く出ちゃってるんで買わないですね。今流行りの最新曲が無料で、しかもダウンロードまでできるアプリが数多く、アプリストアの上位に台頭しています。

無料アプリがある限り彼女たちは音楽にお金をかけないと思いますけど、教育はできると思っています。
音質やプレイリストの質などは絶対にCDやサブスクリプションの方がいい。今は流行の音楽が聴ければなんでもいいというライトな楽しみ方をしてますけど、それを分かってもらえれば、いつかお金を持つようになった時、音楽に対して価値を感じて、お金を払うようになるんじゃないかと思ってます。実際に、私自身がそうでしたから。
賛否はありますけど、YouTubeきっかけでアーティストを好きになる女子高生が多いという事実があるので、プロモーションとしてうまく使うのはありじゃないですかね。

――一方で、ライブには行く若者は多い印象ですが、実際はいかがですか?

吉田:ライブには結構行ってます。街中でタダでティッシュを配ってるからそれにお金を払うのに抵抗があるように、無料が当たり前になってる音楽視聴体験にお金を払わせるのは難しいんですよ。でも、ライブはお金を払わないと行けないから、そこはちゃんと払う。
あとは、グッズ購買欲は高いので、好きなアーティストを応援するためにグッズにもお金をかけてます。CDも応援するためのグッズという感覚で、CDプレイヤーを持っていないにも関わらず10枚とか買う子も結構います。

「マジ卍」のリアリティ

――新しい音楽の消費の仕方をする彼女たちの周りでは、今後は何がどのように流行るんでしょう?

吉田:今の女子高生は「リアリティ」を重視しています。例えば、好きな男性芸能人を聞いたら1位山﨑賢人、2位竹内涼真。理由を聞くと、リア恋枠って言うんですよ。クラスにいたら恋してる、手の届きそうなリアルさを感じるところがいいみたいです。
あとは、音楽もコスメもいろんな分野で、学校の先輩やクラスの友達など身近な人の影響を受けやすい。あの子がいいって言うからその音楽を聴いたりするのが特徴です。リアリティを重視した結果の一つとしてYouTuberに行き着くんです。

――それで夢はYouTuberとなるんですかね……。

吉田:ネット調査とかでよく見ますけど、街頭インタビューをしててYouTuberになりたいって意見を聞いたことがないです。OLとか美容部員とか、意外と堅実で現実的な夢を見てる子が多いですよ。
あとは最近流行った「卍」も、テンションが上がったときに「マジ卍!」って使うのかと思ってましたけど、実際は違いました。「特に意味はないんで、暇なときにつぶやきます」って言ってて、意外とネガティブな使い方をするみたいです(笑)。
ネットの定量的な情報も大事ですけど、定性的な部分、流行のリアルなところって聞いてみないと温度感までは分からないんですよね。女子高生はステマもすぐ見破るくらい敏感なんで、企業の方はネットの情報を鵜呑みにするのは危険だと思います。


今回のインタビューはそれぞれ個別に行ったが、期せずしてリアルな「感情移入」や「共感」が今後の流行のキーワードとして挙げられた。新たな技術やサービスはオンライン、オフライン問わず膨大な量のコミュニケーションを生み出し、あらゆるものの価値観を更新している。変革の真っ只中では是非を判断しづらいが、それらに注目することで様々なカルチャーシーンの流れを掴み、一層面白がることができるかもしれない。


取材・文=組橋信太朗

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