巨大「流しそうめん」オモチャを生んだ タカラトミーアーツ女性開発者の着想と野心

 高さ73センチ。幅120センチ。幾重もの螺旋が組み合わされた流麗なレーンの全長は5.0メートル。完成した実物を目の前にすると、その圧倒的なスケール感に思わず笑みがこぼれてきてしまう。最下部の「プール」に水を張り、スイッチを入れるとタワーのてっぺんから水が流れはじめる。そこに投入されるべき食品は「そうめん」をおいてほかにない……。
 この巨大で大胆不敵なオブジェの正体は、タカラトミーアーツから今年発売された日本……いや、世界最大級の流しそうめんマシン『ビッグストリーム そうめんスライダー エクストラジャンボ』である。



 トイというには過剰に大きく、パーティグッズというにはあまりにもエクストリーム。この超芸術のような商品の開発を担当された同社の平林千明さんにお話を伺った。
「もともと『流しそうめんマシン』というのは、いろいろな会社から定番商品として出ているんですけど、それにオモチャ屋的なアプローチとして氷から水が吹き出すという噴水式の仕掛けを加えた『超ヒエヒエ北極流しそうめん』という商品を開発したら、これがヒットしたんです。その発展系として、滑り台を作ってそうめんを流したら面白いんじゃないかと考えたんですけど、だったらプールにあるウォータースライダーっぽくすればもっと楽しいんじゃないかなと」

『ビッグストリーム そうめんスライダー エクストラジャンボ』を開発した経緯を説明するタカラトミーアーツの平林千明さん。


 実在する建造物をモデルにするなら、オトナでも興味を持ってもらえるような本格的なモノにしたいーー。ということで、都内でもトップクラスのウォーターアミューズメント施設である東京サマーランドに監修をお願いしたという。
「いきなり『スライダーにそうめんを流したいんですが……』とサマーランドさんに電話したら、最初は何を言ってるかわからないと思われたようで(笑)。でも、打ち合わせのときにに試作品を見せたらご快諾いただけて、スライダーの設計技師の方にお話を聞くことができたり、スライダーの実物を見学させてもらえたりしたんです」
 ここで得たディテールが、商品のあらゆる部分に活かされている。
「技師の方に伺ったことなんですけど、ウォータースライダーというのはただ滑らかに下っていくだけじゃなくて、あえて小さな段差やカーブをつけたほうが楽しく滑れるそうなんです。その微妙な段差を商品にも取り入れたら、麺の流れ方に緩急がついて、よりキレイに見えるようになったんです」

さらに巨大化した『そうめんスライダー』シリーズ

 そんな匠の技も取り込んだ『ビッグストリーム そうめんスライダー』は2016年に発売。まさに前代未聞の商品であり、社内でも売れるかどうか疑問視されていたが、発表と同時に大反響を巻き起こして即完売となった。
 そして、今年はさらなる巨大化を提案。再び東京サマーランドに監修を依頼し、長くなったスライダー部分にどデカい漏斗状のコースが特徴的なアトラクション「DEKASLA」まで組み込んだ。
「最初はDEKASLAのミニチュア版のような黒い円錐状のパーツを考えていたんですけど、これだとそうめんがそのまま吸い込まれてしまうんです。なので、左右に揺れる動きをそうめんで再現するようなパーツを考案して、それを『デカスラ』として実装しました」

DEKASLAはこのような形になって流しそうめんマシンに組み込まれた。


 大胆なアイディアと、徹底的なディテールの追求、それを実際に形にして量産化するオモチャ屋の職人魂が合わさり、パワーアップ版『エクストラジャンボ』が誕生した。
「おかげさまで反響が大きく、様々なメディアで取り上げていただいています」

「縦に回る回転寿司」を「観覧車」に昇華!

『そうめんスライダー』シリーズで手ごたえを感じた平林さんは、「遊園地のアトラクションを食卓に持ってくる」という壮大なプロジェクトを勝手に開始。
「家庭用の回転寿司マシンというのも定番商品なんですけど、これももうちょっと面白くしたいなって考えていたんです。そこで、普通は横に寿司が回るけど、これが縦に回転するものは今までになかったんじゃないかな、と……」
 この「縦に回る回転寿司」が、平林さんの脳内では「観覧車」として昇華された。



「そのアイディアが浮かんで、ネットでいろいろな遊園地やテーマパークの画像を見ていたら、白くてキレイな観覧車が目にとまったんです。それが、富士急ハイランドさんにある『シャイニング・フラワー』でした」
 早速、富士急ハイランドに連絡すると、こちらも快諾。シャイニング・フラワーだけでなく、寿司の皿をリリースするコースター部分を富士急ハイランドの看板マシンである「ド・ドドンパ」とコラボすることまで決まった。
 観覧車のゴンドラ部分に寿司皿をセットし、スイッチを入れると優雅に寿司が回り始める。好きな寿司が回ってきたら、「ポイントレバー」を押すと寿司皿がリリースされ、ド・ドドンパのレールを滑り降りるようにサーブされるという流れだ。

『天空パーティー 寿し大観覧車』には富士急ハイランドの「ド・ドドンパ」のレールが採用されている。


 このマシンは『天空パーティー 寿し大観覧車』として完成した。こちらも高さ51.5センチと迫力のある逸品で、『ビッグストリーム そうめんスライダー エクストラジャンボ』と並べると、まさに卓上が遊園地と化す。
「家庭の食卓が遊園地になったら楽しいなって思って、いろいろなアイディアを考えています」

東京・葛飾区にあるオフィスで話を聞かせてくれた平林さん。


 遊園地やテーマパークに行って、「あのアトラクションにどんなメニューをかけ合わせたら食卓に持ってこれるのか」をひたすら考えている女性がいる。そして、その想いにゴーサインを出して、精巧なプロダクトを製作し、ヒットさせるオモチャ会社が葛飾区にあるーー。この圧倒的な事実に、誰もが思わず笑みがこぼれてきてしまうのではないだろうか。

文=灸怜太
写真=藤田二朗

ビッグストリーム そうめんスライダー エクストラジャンボ | スペシャルサイト | タカラトミーアーツ
天空パーティー 寿し大観覧車 | スペシャルサイト | タカラトミーアーツ

#CULTURE

関連記事はありません。There are no related articles.

MOST POPULAR

LOGIN