“サ論”から広がる多様なサウナ哲学。サウナ偏愛クリエイター集団“蒸され人”熱風座談会(後編)

新たなポップ・カルチャーとして様々な業界から注目されているサウナについて、サウナをこよなく愛する気鋭のクリエイター集団“蒸され人”のメンバーによる座談会を開催。

前編では各メンバーのサウナ遍歴や“蒸され人”結成の経緯などからサウナの魅力を伺った。後編ではよりディープに、クリエイターである彼らならではの感覚でサウナ愛を語ってもらう。

[参加メンバー 写真左から]
鍵っ子(モ作)さん(電子書籍ディレクター)
シシヤマザキさん(アーティスト)
小田雄太さん(デザイナー/アートディレクター)
ヌケメさん(ファッションデザイナー/アーティスト)

サウナで感じる“カジュアルな死”とは? サウナ偏愛クリエイター集団“蒸され人”熱風座談会(前編)

鍵っ子さんによるデザインのロゴ。サウナ好きクリエイターによる“蒸され人”。現在は35名のメンバーが集っている

“蒸され人”の活動は“サ論”

——“蒸され人”は現在35名のメンバーがいるそうですが、どういう方が多いですか?

シシヤマザキ 下は20歳くらいから上は40代で、音楽系が圧倒的に多いですね。個性が強い人ばかり。あとは……編集者、ライターとか。

ヌケメ メンバーは東京以外に仙台、名古屋、ロンドンにもいます。

——普段はどういった活動を?

鍵っ子 オンラインサロンですね。

ヌケメ 「サウナ論」と書いて“サ論”。

小田 サウナに関する話題を投稿する感じです。

「サウナと水風呂を繰り返すと、体の表面だけじゃなくて、内蔵の状態まで意識し出しますよね」とヌケメさん

小田 行って良かったサウナの情報交換が多いですね。ヌケメくんが行ったドイツの施設とかすごく面白そうだった。

ヌケメ ベルリンの総合スパ施設「LIQUIDROM」ですね。水風呂とサウナが4種類あって、その中の体がめちゃくちゃ浮くパラボラ状のプールがすごくて。円形のプールで天井がパラボラになっているから、ささやき声が中央に集まるようになっているんです。

エッヂにいると隣の人の声も聞こえないけど、真ん中にいると呼吸音まで全て聞こえる異常な空間。それで、月に数回はクラブイベントが開催されたり。ヨーロッパのサウナは男女裸で混浴というのもあって、“ヒッピーの夢が具現化する場所”みたいな感じがすごかった。

小田 ヒッピーたちの桃源郷みたいな。僕も昔イギリスの「グラストンベリーロックフェスティバル」※1に行って、ジプシーの人たちが集うヴィレッジがあって、そこで現地人と一緒に裸でサウナっぽいテントに入った記憶が強烈に残っている。サウナとヒッピー文化ってクロスするところがあるかも知れないですね。

※1イギリスのピルトンで1970年から開催されている世界最大規模のロック・フェスティバル

鍵っ子 確かに。ネイチャー体験で言うと、今年“蒸され人”のみんなで行った長野の『日本サウナ祭り』※2が忘れられない。

※2長野県南佐久郡小海町の「フィンランドビレッジ」で開催されるイベント。湖と林に囲まれた大自然の中で、北欧の様々な本格サウナが楽しめる。

ヌケメ あれは良かった。湖を水風呂にみたてて、2℃くらいで奥の方はまだ凍っていて人が歩いていたり。

鍵っ子 ルーメットのトレーラーを改造した「サウナートースター」の中に入って。めちゃくちゃ高温の中、車窓から湖を眺めて「今すぐあそこに飛び込みたい!」って気持ちを盛り上げてから、ダッシュしてザバン!というのがたまらなかった。太陽と湖というサウナの根源的なエッセンスをプリミティブに体感できて、自分の「サウナ感」が更新されました。

シシヤマザキ 行きたかったです……。私が印象に残っているところだと「羽衣湯」っていうところで。ドーム型の屋根とか、急な階段をあがったところにある休憩室とか、中の構造がいびつで面白い。年季が入っていて、お洒落でも狙ってもいなくて、普通に異界感のあるレトロフューチャーな雰囲気がいい。

ヌケメ 待合室に尋常じゃない数の漫画があったりね。

鍵っ子 あと僕が思い出深いところだと、静岡の「サウナしきじ」の水風呂。風呂とサウナ、水風呂のシンプルな構成だけど、水質が良すぎて、カルキや塩素臭さが一切ない。初めて水風呂入った時、無意識に「ありがとう」って言ってしまって、自分で驚きました(笑)。

シシヤマザキ その水がサウナのスチームとかお風呂のお湯にも使われているから、その空間にいるだけで恩恵を受けられる。最高ですよね。

「クリエイティブ系だけじゃなくても昼夜ないライフスタイルとか椅子に座りっぱなしで、体調の不調に悩んでいる人は是非サウナを試して欲しい」と鍵っ子さんは熱く語る

サウナがクリエイターにもたらすもの

——サウナが皆さんの活動や作品作りにどういった影響を与えていますか?

ヌケメ 以前、刺繍ミシンをハッキングしてデータをバグらせたまま刺繍させる“グリッチ刺繍”という作品を作っていて。その頃は、テクノロジーとかメディアの裏側の仕組みに亀裂を入れることで構造を露呈させるような、メディアアート的なアプローチをしていて、割と理詰めのドライな作風を目指していたんです。

その後にサウナの良さに気付いたら、徐々に自分の内面や精神状態の方に気持ちがフォーカスするようになって、ちょうど銀鏡塗装ができる方と知り合ったこともあって、自分の内面のフェティッシュな感覚を追求できる銀鏡彫刻を作るようになりました。

サウナによって今まで重要じゃないと思っていた部分が肥大化するようになったというか、銀鏡彫刻シリーズはサウナが無かったら作っていなかったと思います。

小田 僕は企業ブランディングの仕事が多くて、偉い人たちと話しながら理詰めでデザインしがちなんです。そんな時に、サウナに入ると強制的に冷やされてしめあげられた後に弛緩するから、だんだん頭の中でがんじがらめになったものが寛解していくような感じがあって。

その時にいいアイデアが閃くことがありますね。それまでは移動中とかに考えることが多かったんですが、それがより自由にできるようになったというか。

哲学的な話からサウナ施設の情報交換までサウナの話題が尽きない

シシヤマザキ 私は感覚的に「粒子」を感じられたことが一番大きい。最初に言いましたけど(前編参照)、音楽を体感して自分が空間の粒の一部になって調和しながら喜びを感じることができて、それが第一段階。

作品は、実写を上から絵の具とかでなぞっていってアニメーションをつくる「ロトスコープ」という手法を使うんですが、絵の具でもデジタルでも、いかに人のシルエットや動きに色と質感の粒子をまぶしていくかが重要で。ずっとその手法って「なんだろう」って思っていたんですが、サウナで粒立つ感覚を視覚と肌で感じて、その粒子の“ザラみ”が自分の作品作りと合致して。一番大事な部分に気づけました。

鍵っ子 泥臭い話なんですけど、終わりの見えない仕事をやっていた時、楽しいけど凄く大変な仕事で、それをどう楽しみながらやるかを考えた時、終わった後のご褒美性を高めるために、サウナを見据えて意識したんです。

「終わったらととのえにいける!」って。サウナの後の水風呂みたいな感覚ですね。プレッシャーがかかって、最悪、精神が壊れるところまでいきそうなギリギリの状態でしたが、サウナがあったからスムーズにいけましたね。

それぞれに芽生えるサウナ哲学

——では最後に、皆さんにとってサウナとは?

ヌケメ 瞑想状態になれて、思考が整理できる場所かな。頭の中に溜まっている悩みや問題のノイズのギザギザ感が、サウナに入ることによって、全体が収縮していくイメージ。

感覚的な話ですが、小さくなっていくけど、解像度はあがってクリアになる感じ。あと、常々「良くない“チル”は“ダルさ”で、いい“ダルさ”は“チル”」で、表裏一体と思っているんですけど、そのいいダルさに近くて、サウナで心地よく死にかけている状態になるからこそ「生きている」ことが実感できますね。

小田 「正しい」が多い空間だと思います。薬とかサプリとか健康に良くても依存症があったりしますが、サウナは清潔で体も頭の中も綺麗になるイメージ。一般的な正しさに対して懐疑的な目で生きている自分のような人間でも素直になれる。

「サウナに入って考えていると、物事をニュートラルな視点で見れます」と小田さん

シシヤマザキ 私は、心を解きほぐしてくれる効果を一番感じますね。整体とかマッサージみたいに「加える」のではなくて。あと、水に対して感謝するようなプリミティブな体験が、街中の作られた施設でできるのが改めて考えて特殊だな、と思います。感動までできる施設がどの街にもあって、日常で体感できる。その上で、根源的に大事なことに気付かせてくれる。

鍵っ子 日常生活で一番フィジカルを感じるのがサウナ。いつもは服を着てますが、サウナでは裸になって水や蒸気、熱気で心身を整えながら、コンディションのなだらかな変化が楽しめる、もう、生活に外せない場所ですね。

ヌケメ しかし、サウナの話していたら行きたくなりますね。

シシヤマザキ ここにいる3人は昨日も行ったけど(笑)。

小田 今日も行きますか(笑)。

※注意:サウナは無理せず健康に留意して楽しんでください

【プロフィール】
ヌケメさん
ファッションデザイナー/アーティスト。Semitransparent Design所属。ミシンの作動データにグリッチを発生させる『グリッチ刺繍』が第16回文化庁メディア芸術祭にて推薦作品に選出。最近は鍵っ子、シシヤマザキと共にKNS目隠しラジオを放送中。
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小田雄太さん
デザイナー/アートディレクター。COMPOUND inc.代表/まちづクリエイティブ取締役。多摩美術大学非常勤講師。 最近の主な仕事として「NewsPicks」UI/CI開発、diskunion「DIVE INTO MUSIC」、COMME des GARÇONS「noir kei ninomiya」デザインワーク、「BIBLIOPHILIC」ブランディング、「100BANCH」コンセプト・VI・サイン計画など。
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シシヤマザキさん
アーティスト。水彩画風の手描きロトスコープアニメーションを独自の表現方法として確立。Chanel、PRADAや資生堂などのブランドのプロモーションイメージの制作を担当し、世界的に活躍。 オリジナルアニメーション「YA‐NE‐SEN a Go Go」(2011)、「やますき、やまざき」(2013) は国内外問わず数多くのフェスティバルで上映され、反響を呼ぶ。2018年には、Forbes 30 Under 30 Asia list – Class of 2018 に正式に選ばれる。ライフワークとして一日一個の顔「MASK」を毎日作り続けるプロジェクトも行う。2017年よりクリエイター集団「1980YEN」(イチキュッパ)のメンバーに。各地でライブパフォーマンスやアートプロジェクトを行っている。
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鍵っ子(モ作)
リトルプレス支援サービスBCCKSのスタッフとして働きつつ、個人でデザイン・コンテンツ作成業務を行う。最近の仕事は、TシャツブランドGbM2018コレクションのTシャツデザインとカタログ本の作成。
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写真=上樂 博之
取材・文=藤谷 良介
企画=東京ピストル

#CULTURE

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