サウナで感じる“カジュアルな死”とは? サウナ偏愛クリエイター集団“蒸され人”熱風座談会(前編)

若者や女性からも注目を集め、ポップカルチャーにまで昇華しつつあるサウナ。

その中で、銭湯やサウナをこよなく愛する気鋭のクリエイター集団“蒸され人”のメンバーに独自の視点でサウナの魅力を語ってもらった。

[参加メンバー 写真左から]
鍵っ子(モ作)さん(電子書籍ディレクター)
シシヤマザキさん(アーティスト)
小田雄太さん(デザイナー/アートディレクター)
ヌケメさん(ファッションデザイナー/アーティスト)

“蒸され人”メンバーそれぞれのサウナとの出会い

——皆さんがサウナに目覚めたきっかけを教えてください。

ヌケメ 4、5年前から不眠症で、昼に運動した方がいいと思ってカポエイラを始めたのですが、練習の後にスーパー銭湯に寄る機会が増えて。以前からタナカカツキさんの『サ道』※1は知っていたんですけど、サウナで「トリップ」する感覚を実感して、それからですね。

※1サウナをポップカルチャーにまで昇華させた、人気ギャグ漫画家によるサウナ体験エッセイ漫画。サウナーのバイブル的存在。パルコ出版刊(2011年)

小田 僕はサウナ歴が浅くて、まだ半年くらい。ずっと自律神経が失調気味で不眠や肌荒れがひどくて、色々試している中で、年に1回やっている断食のトレーナーにサウナの温浴療法を勧められました。

ずっとサウナには昭和のガハハおやじ的なオラついたイメージがありましたが、九州の名泉「武雄温泉」に行った時に、試しにサウナと水風呂に入ったら思いのほか気持ち良くて。そこから3ヶ月は治療のつもりでほぼ毎日サウナに行きましたね。

“蒸され人”発起人であり、独特の言語センスでサウナ愛を語るヌケメさん。ホームサウナは新宿の「弁天湯」。「水風呂は汲み上げた井戸水なので、季節によってバラつきのあるナチュラルな感じがいいですね」

シシヤマザキ 私も不眠に悩んでました。サウナはそれが深刻化する前に教えてもらって。1980YEN(イチキュッパ)というバンドをやっているんですけど、そのバンドの発起人であるミュージシャンの食品まつり(食品まつりa.k.a foodman)さんに勧められました。

ちょうどその頃エクスペリメンタル系のライブによく行っていて、空間の中で音楽を「肌で感じる」ことが分かってきた時期とシンクロしていて。サウナを体験して、ミュージシャンがハマる理由が分かりましたね。

あと、女子サウナーの人はよく言いますが、基礎体温が上がったり、代謝が良くなって冷え性が改善したり、単純に体調が良くなったのもあります。

鍵っ子 僕はもともとお風呂が好きで、サウナに目覚めたのは2005年頃。その頃、(東京の)高井戸と荻窪の間に住んでいて、気分が良くない時に「なごみの湯」とか「美しの湯」に行って、サウナと水風呂でリフレッシュするようになりました。

当時は「ととのう」という言葉※2を知らなかったんですが、『サ道』でポップに言語化されたことで自分の体験と一致して、それ以降は色々なサウナを追求するようになりましたね。

身体的には、皆さんと同じく自律神経ボロボロで、常に緊張している体質なので、そういった面でも効果的なんです。

※2サウナによってある種のトランス状態に入ることをサウナスラングで「ととのえる」と表現する。詳しくは「“サ法”とは?“ととのえ”とは? 最新サウナ・カルチャー入門(前編)」参照。

「合計すると1時間くらい居ますが、サウナと水風呂を小刻みに繰り返して入る」スタイルの小田さん。ホームサウナは渋谷区笹塚の「大黒湯」

小田 僕らの仕事は、脳内に比べて体の消費カロリーが断然少ないから、そういう不調を起こしやすいよね。無呼吸症候群の人がいたり。

ヌケメ 昼夜関係ないですし。僕はオンとオフのスイッチを切り替えるのがヘタで……。

シシヤマザキ 私も全然切り替えられない。でもサウナはスマホが持ち込めないし、情報過多な日常から一旦隔離されるところがいい。切り替えられる。

——どういったタイミングでサウナに行きますか?

鍵っ子 もう、常に行きたい(笑)

ヌケメ 基本的にはそう。最近は、課題や悩みを溜めてからいきますね。今彫刻の作品をつくっていて、造形のリサーチや必要な道具、方向性とか悩みをパンパンに溜めた状態でサウナに行って整理する。

足し算で要素を積み上げて、サウナの中で割り算をするイメージ。もちろん体を「ととのえ」ますが、思考を整理する側面も強いです。

鍵っ子 寝る前に悩みを溜めて、夢が整理してくれるのと似てますね。

スーパー銭湯のチェーン「おふろの王様」からはじまり、今は渋谷区池尻大橋の「文化浴泉」に通っているというシシヤマザキさん。「文化浴泉は、銭湯界のロイヤルホスト。リッチな安定感があります」

小田 僕はリラックスしたい時かな。ただ、あまりサウナに長時間いられない体質なので、中でどう過ごすかが大きなテーマ。他のサウナーの様子を眺めるのは楽しいですね。

シシヤマザキ 私も隙あらば行きたいですけど、フィジカルな楽しみが大きいかな。ずっと頭を洗わないで、サウナ入る前に洗って超スッキリ!みたいな(笑)。

鍵っ子 (笑)。よくサウナを題材にした漫画とかで、女性同士特有のマウンティングとかコミュニティが描かれていますけど、本当にあるんですか?

シシヤマザキ あります! いわゆる常連の“ぬし子”※3がいて常に監視するように見ていたり、聞いた話で、目が合うごとに「ジロジロ見んじゃねぇ!」って怒るおばさんとか。

でも、私はもう最初から「勝手に色々する人です」的な態度を取るようにしていて。冷えやすい鼠径部に熱を送りたいから、できるだけ股を開いて座ったり、熱気を上からかけたりするのを、人がいない時じゃなくて、人がいても最初からやる。

※3『サ道』で描かれた、特定のサウナに通う常連客のこと。新顔が入れば監視し、中には自分のルールから外れる行為に及んだ者には即座に注意する過激派も。

小田 注意されたりしないんですか?

シシヤマザキ そしたら(軽い声で)「あ、すいませ〜ん、分かんなくってぇ〜」ってギャルみを出してかわします。

一同 (爆笑)

鍵っ子 僕は体が緊張している時には行ってほぐしたくなるなぁ。あと、住まいが東京の北部なので、池袋で終電がなくなった時に「Times SPA RESTA」で泊まりがてら入りますね。

ホームサウナの北区赤羽「みどり湯」に通いながら、韓国式のサウナ「チムジルバン」等、独自にサウナを探求している鍵っ子さん。「チムジルバンは水風呂前提ではなくがなく休憩所でダラダラゆっくり弛緩する感じがアンビエントで心地良いですよ」

全身が管になるような心地良い“カジュアルな死”

——サウナや水風呂の自分なりの楽しみ方はありますか?

ヌケメ その時の体調やサウナと水風呂の温度によって変わりますが、僕は基本サウナ6分、水風呂2分、休憩10分をベースに、調子が良かったらそのトライアングルを4セット。

低温サウナがある場合は、低温に10分入った後、高温サウナに2分。水風呂を少し長く3分入って、20分は休みます。休憩がメイン。高温の前に低温に入ると、感覚として血液の「すべりが良くなる」んです。

鍵っ子 それ分かります。血流が良くなった状態で「長く持つ」感じがする。

シシヤマザキ 私はさっきの下半身を温める話にも通じますけど、女子サウナーさんに教えてもらったスタイルがあって、なるべく高いところで仁王立ちします。そのポーズが全身をまんべんなく温めるのに効率がいい。

表裏で3分ずつくらい。その後の水風呂は、聴覚の変化の現象を楽しんでいたりしたけど、最近はさらっと1分くらいかな。

「ぬし子とか周りの目を一切気にせず、自由に楽しめばよりサウナの快適性が上がります」とシシヤマザキさん。週に1回はサウナに通っているとか

小田 水風呂は温度によりますよね。僕の理想は15℃くらい。ホームサウナの「大黒湯」とかは汲み上げた地下水なので、気温によって変わるんですけど、自然な冷たさを感じる時に、体の中の水分と外側の水がシンクロしていく感覚が好きですね。

ヌケメ 一体感みたいな感覚ですよね。僕も一時期、水風呂に長くはいるのにハマッてました。最初「冷たっ!」っていう痛覚を感じる状態から、徐々に“はごろも”※4になって、手足の感覚がなくなって、冷たさがまったく無い状態になる。

そうすると口から出てくる空気も冷たくなって、全身が頭と喉と心臓だけがつながった管になったような不思議な感覚になる。もう立ちあがれなくなって「この先に死があるのか」とすら感じたり。

※4水風呂に入り、冷たさを感じなくって体全体が膜で包み込まれているように感じる状態のこと。

鍵っ子 生と死の境界線の臨死体験みたいな。

小田 でも、恐怖ではなく心地良い「死」だよね。

ヌケメ そう。命のボリュームがスーッと下がっていってミュート状態になるような、ある意味極限に集中した感覚。それをイメージして自分のバンド(ヌケメバンド)でサウナのコンピレーション『MEiSTER/V.A』に参加した時、タイトルを「カジュアルな死」にしたんです。

自然に繋がりを広げる“蒸され人”

——“蒸され人”はどういう経緯で結成されましたか?

ヌケメ 去年の9月に僕のバンドと1980YENのツーマンイベントが六本木であって。その打ち上げで「サウナに行こう」って話になって、LINEグループを作ったのが始まりです。僕が“蒸され人”って名付けて、打ち上げの2次会で六本木の「アダムアンドイブ」に行きました。

鍵っ子 僕はそのライブのお客さんとして行っていて。今メンバーは35人。増えましたねー。

小田 僕はヌケメくんに捕捉された。九州の武雄温泉で初めてサウナの良さに気付いて、Twitterで「サウナ気持ち良かった」ってつぶやいたら、ヌケメくんが「今何つったよ!?」って。「いやサウナ気持ち良かった」って返信すると「もっと、それちょうだい!」みたいな謎のやりとりが続いて(笑)。

ヌケメ 僕が小田さんの顔が好きすぎて、距離をつめたくて……(笑)

小田 最終的に「サウナに行きたいです」って言ったら“蒸され人”に招待されました。

鍵っ子 (笑)。そういう感じで、メンバーがサウナ好きの人を各自でスカウトして自然に広がっていきましたね。

“蒸され人”は伊勢丹新宿の「TOKYO解放区」の銭湯企画で、鍵っ子さんがデザインしたロゴ入りのTシャツを販売した

サウナで繋がるクリエイター集団“蒸され人”は徐々にその輪を大きくし、現在は35名ものメンバーが集っている。「最新サウナカルチャー入門」で紹介したように、サウナの波は確かにクリエイター界隈にも広がっているようだ。その背景にはやはりフィジカル面とメンタル面において、サウナからしか享受できないものがあるからだろう。

続く後編では、サウナ体験の凄味について、クリエイターの彼らならではの視点でさらに深くまで掘り下げてもらう。
※注意:サウナは無理せず健康に留意して楽しんでください

(後編へ続く)
"サ論"から広がる多様なサウナ哲学。サウナ偏愛クリエイター集団“蒸され人”熱風座談会(後編)


【プロフィール】
ヌケメさん
ファッションデザイナー/アーティスト。Semitransparent Design所属。ミシンの作動データにグリッチを発生させる『グリッチ刺繍』が第16回文化庁メディア芸術祭にて推薦作品に選出。最近は鍵っ子、シシヤマザキと共にKNS目隠しラジオを放送中。
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小田雄太さん
デザイナー/アートディレクター。COMPOUND inc.代表/まちづクリエイティブ取締役。多摩美術大学非常勤講師。最近の主な仕事として「NewsPicks」UI/CI開発、diskunion「DIVE INTO MUSIC」、COMME des GARÇONS「noir kei ninomiya」デザインワーク、「BIBLIOPHILIC」ブランディング、「100BANCH」コンセプト・VI・サイン計画など。
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シシヤマザキさん
アーティスト。水彩画風の手描きロトスコープアニメーションを独自の表現方法として確立。Chanel、PRADAや資生堂などのブランドのプロモーションイメージの制作を担当し、世界的に活躍。 オリジナルアニメーション「YA‐NE‐SEN a Go Go」(2011)、「やますき、やまざき」(2013) は国内外問わず数多くのフェスティバルで上映され、反響を呼ぶ。2018年には、Forbes 30 Under 30 Asia list – Class of 2018 に正式に選ばれる。ライフワークとして一日一個の顔「MASK」を毎日作り続けるプロジェクトも行う。2017年よりクリエイター集団「1980YEN」(イチキュッパ)のメンバーに。各地でライブパフォーマンスやアートプロジェクトを行っている。
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鍵っ子(モ作)
リトルプレス支援サービスBCCKSのスタッフとして働きつつ、個人でデザイン・コンテンツ作成業務を行う。最近の仕事は、TシャツブランドGbM2018コレクションのTシャツデザインとカタログ本の作成。
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写真=上樂 博之
取材・文=藤谷 良介
企画=東京ピストル

#CULTURE

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