煩悩丸出しで歩くTVディレクター岡宗秀吾の“一度きりの人生の生き方”(後編)

煩悩丸出しで歩くTVディレクター岡宗秀吾の“一度きりの人生の生き方”(前編)

出版までの経緯から岡宗氏のストレートな生き方の一面を垣間見た前編
後編はさらに踏み込み、多様性を重んじる生き方や表現、これからの取り組みについて語ってもらった。

ダメなとこまで含めて人間が好きなんです

――やや衝突があったものの、無事表紙のデザインが着地してよかったです(笑)。担当の方からも好評だったという本の内容ですが、どのエピソードもユニークな中に優しい視点が感じられました。

別に自分が優しいやつって言いたいわけじゃないんですが、書いてあるのはどれも僕自身なんですよね。
僕、昔からイジメが嫌いなんです。
イジメられっ子を見たら助けずにいられない。僕自身はイジメられたこともイジメたこともないんです。やられた側からするとイジリをイジメと捉えることもあるので100%ではないですが、でも、故意に人を貶めたりすることがすごく嫌いなんです。
勉強ができなかろうがブスだろうが、ダメなとこまで含めて人間が好きなんです。

――ただ、今の世の中では価値観の幅が狭まってきているような気がします。

それについては、メディアがすごくよくないと思いますね。例えば、かわいい女の子はこういうものだ!とか、こういう男がかっこいい!とか言ってそこを目指させたり。
もちろん、ビジネスなんで一元化を謳うことで消費欲を活性化させる、とかそういう意味は分かるんですけど、僕は全然それに乗る気がないです。
もうちょっと多様性が世の中にないと。

――ネットから全世界の情報が手に入る世の中の流れとは逆行してますよね。


実際に海外に行くと、ダウン着てるやつと短パンのやつが一緒にいたりするじゃないですか。日本だと、「寒くないの!?」とか言われると思うんですけど、本人が着たいんだからどっちでもええやん!って(笑)。
許容性や多様性を認めることって人生を豊かにすると思うんですよね。僕がつくる作品でメッセージがあるとすれば、そういうところですかね。

『BAZOOKA!!!』を始めるときも、『全日本コール選手権』をやるときも、特に必要とされてないものを作ってるんですよ。『全日本コール選手権』なんて、童貞が勝つ物語ですよ。集まった中で一番だめなやつが勝つ。そこに力がある。
僕はテレビマンなんで、それをエンターテインメントに昇華して表現することを使命だと思っています。

もう何年も前から、コンプライアンスがどうこうという話になって、テレビの中で「罰ゲーム」という言葉を使ってはダメとか、女の人の乳首を出したらダメとか、そんなことばっかり言うようになってるんです。

次に何を表現するのか?

――単純な表現の面でも制限が厳しくなってますよね。

印象に残ってるのは、テレビで放映した『タイタニック』劇中のヌードのデッサンをするシーンがあって、そのデッサンにもボカシをかけてるんです。そういうの狂ってると思うんです。
セックスの話をしていい時間としてはいけない時間があるとかは分かりますけど、それは違うじゃないですか。女の人は放送できないものを体につけてるのかって。
それはきっと、怒られると思って誰かが自己保身のためにやってるんですよね。そういう地上波の体制のカウンターとして『BAZOOKA!!!』をやり始めたんですよね。

――当時はかなり反響が大きかったと思います。でも、今は衛星やネットの番組で過激なものが増えてきてますよね。

そうなんです。今度は“地上波ではできない”ばっかりやり始めた。それで、僕は途中からやらなくなりました。
それはファッションと同じで、人と同じ服着るのはオシャレじゃないと思うんです。目の前に同じ服の人がいてOKなのって、少なくともクリエイターではない。
そういう感覚で、僕は人がやり始めたら興味なくなるんですよね。周りがやってないことをやるとやっぱり違和感がある。「それ流行ってんの?」って聞いてくる人がいるけど、流行ってないからやってるんだ!っていう。
で、それが評価されたらまた興味がなくなって……っていうのをずーっと繰り返してるんです。

――今後やってみたい作品の構想はあるんですか?

『グーニーズ』みたいなのが撮りたいです。
子どもの頃からジュブナイルものが好きで『IT』とか熱心に観てたんで、親子愛とか子ども同士の青春みたいなの、いいですよね。
手癖が決まってくるから、好きだけどできないこととかたくさんあるんですよ。それは大根さん一人を見てもそう。
大根さんは女の子がすっごい好きなんです。よくグラビアを見せてくれるんですけど、僕には分からない(笑)。でも、大根さんは好きだから女の子をきれいに撮るんですよ。それは僕には全然できないんです。

『煩悩ウォーク』は若者へのエール

――でも、映像ではないですが、著書を出版する今回の取り組みは新しい挑戦とも言えますよね。

本の後半の「先輩と僕」というところで、僕に影響を与えてくれた人達のことを書いたんですけど、みんな自分の人生に責任を持って好きなことをやって、それを成立させてきてるんですよ。スチャダラパーも大根さんもみうらじゅんさんもみんなそう。その人達と比べるとまだまだ有名じゃないけど、その一歩になればいいなと思ってます。

――新たな一歩となった著書をどんな人に読んでほしいですか?

いつも自分がつくる作品は、出たら人のものって思ってるんですけど、強いて言うなら自分と同じような子どもに読んでほしいです。
何かを表現したいとか思ってる人達に、東京に来たら必ずいいことがあるわけじゃないけれど、ちゃんと頑張ればいい関係が築ける環境があることを伝えたい。
本当の田舎の何もない国道で悩んでたって、ネットが栄えた時代とは言え、それは形になりづらいから。

しかも、自意識が高ければ高いほど人の悪口を言い出したりすると思うんですよ。自分はなにもしていないのに。でも、SNS上で、自分は匿名で有名人に絡むことで留飲を下げたりしても意味がない。
だから、自分の名前書いて自分の自信のあることをやりなよ!って思うんです。
自信がなくて批判するのはいいし、何かを表現してないと表現者に対して何か言っちゃいけないってわけでもないけど、だせえよ!って。何もないことはプラスじゃないから。そこに足場を置いて匿名性の中で人をディスってる暇があったら、絵を一枚でも、写真を一枚でも、詩を一行でも書いた方がいい。
そういう人達のエールになればいいのかなって思うし、そういう人が現れるのを待ってるし、一緒に仕事がしたい。共鳴さえできれば、僕のやり方じゃなくて全然いいし。

――もう自分を子どもと呼ぶには年を取り過ぎていますが、まだまだ経験の浅い身としては背筋が伸びる思いです。

好きなようにやって、一回の人生を完全燃焼した方がいいですよね。
自分の技を磨くって言っても、それが売り物になるまで10年単位で時間がかかるんですよね。それを本気出してやれるのか。
お金だって大事だからそのバランス、せめぎ合いなんですよ。僕もそれで悩むことはありますし、良いことばっかりじゃないです。だけど、やるって決めてるから。
そういうわけで、まだまだ頑張ります!

煩悩丸出しで歩くTVディレクター岡宗秀吾の“一度きりの人生の生き方”(前編)

写真=田中利幸
文=組橋信太朗

【書籍情報】
『煩悩ウォーク』

11月30日に文藝春秋社より刊行された、岡宗秀吾氏による初の著書。
1973年に神戸で生まれ、ゾンビ映画やオカルトに没頭しながら
友人や先輩たちと謳歌した青春時代の話から、阪神・淡路大震災の体験談、ADを経てテレビティレクターとして活躍する現在までのエピソードを語る。
くだらなくも人間味が溢れる岡宗氏の歩んできた道のりを愛さずにはいられない。

#CULTURE

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