「性」の表現者たちは韓国社会をどう戦っているか?(2)
アートを信じ、セックストイを作る。DURIMIMIの場合

現在、性マイノリティに対する認知が進んでいる韓国社会ではあるが、それ以前からいわゆる社会のタブーを表現し続けてきたのがDURIMIMIだ。2014年から自らがモデルとして登場する雑誌『ZUZNマガジン(濡れた雑誌)』を発行し、レズビアン文化、ロリータ文化、女性が上位のSM(male-sub)やペットボーイなど女性目線で男性をセクシーに視覚化したものなど女性向けアダルト誌として様々なタブーに切り込んで紹介してきた。男性向けとして当たり前に世の中に存在しているものを同じように女性や性マイノリティ向けに制作することによって、社会に一石を投じてきたと言える。現在は女性用のセックストイブランドを立ち上げ事業家として活躍するDURIMIMIに、現在の韓国のセクシュアリティとアート表現のあり方について聞いてみた。

「女性のためのピンク雑誌」を創刊

ーー自己紹介をお願いします。

こんにちは。韓国に住んでいるDURIMIMIです。本名はドゥリです。
DURIMIMIの意味は、フランスに住んでた時の友人が私をMIMIという愛称で呼んでくれたのを、そのまま現在までニックネームとして使っています。MIMIはフランス語でMignon(かわいい)という意味ですが、もうちょっと可愛く言うとMIMIとなります。韓国語の「キヨミ(かわい子ちゃん)」と似た感じかと思います。深い意味はないですが、その友達との良い思い出だったので今でも使っています。

ーー制作・発行していたZUZNマガジンはどのような雑誌ですか?

ZUZN(=韓国語で濡れた雑誌)は、女性が主導的に作るFetish+ Erotic+ Art+ Bookです。韓国では女性が作るピンク雑誌(アダルト誌)と言う名前で発行していました。

ーーなぜ、女性のためのアダルト誌を作ろうと考えたのですか?

セクシュアリティのアートワークを続けているうちに、女性が作るピンク雑誌を実現したいと思うようになって。

幼い頃から美術の勉強をしていて、特に、フェミニズムに対してはひときわ情熱を持って勉強してきました。私は絵を描く事よりもパフォーマンスに興味があったので、より直接的な作業をしたかったんです。アメリカ、イギリスのフェミニズムよりも少し様々な視点を持っている、フランスのフェミニズムにより惹きつけられて、フランスに勉強をしに行きました。フランスでは、多様で開かれたセクシュアリティの文化に触れることができました。しかし、フランスでの美術の勉強の方は思ったよりもアカデミックで、フランスの美大の雰囲気に退屈していました。

そのうち、サン・ミッシェルにあった中古書店に行っては日本やヨーロッパなどの昔のピンク雑誌に接するようになりました。ビジュアル的にそれらの雑誌に惹きつけられたし、女性の視点から再解釈してみたいと思うようになったんです。

ZUZNマガジン(現在は休刊中)

激烈批判にアカウント停止——韓国社会の高い壁

ーー実際に雑誌を読んだ人の反応はどうでしたか?

多くの論争が起こりました。多くの男性、また女性のフェミニストの中にも私を非難する人は多かったですが、10〜20代の若い女性たちはとても好んでくれました。まだ韓国で「転覆」的な行為をすることは容易ではないと感じました。

ーー韓国社会において、セクシュアリティをテーマにした芸術表現をめぐる雰囲気はどうですか?

私の場合は、困難をたくさん感じました。

特に、ZUZNマガジンはわざわざ「ピンク雑誌」という刺激的なタイトルを掲げていましたからね。私は男性の専有物だったピンク雑誌に、女性の視点から新しいセクシーなイメージを提示したかったので、意図的にそのようなワードを書きました。しかし、そのせいでいくつかの方面から多くの批判を受けました。当時はフェミニズムに対する論議もここまで熱くなかったし、少し時代の先に行き過ぎてしまったという思いが募りました。

その一例として、ZUZNマガジンは韓国のFacebook上で常にアカウント停止を受けました。Facebookには、堂々と女性を対象化した様々なマーケティングや写真が氾濫しているにもかかわらず、ZUZNが男性を性的に対象化したという理由で、引き続き規制を受けているんです。インスタグラムも同様です。司法制度もまた、私を良い目で見ていないので、「ポルノを作っている」という理由で警察の調査まで受けて尋問まで受けなければならないということもあって、あまりにも辛く大変でした。

しかし、今では韓国でもフェミニズムやLGBT/Qへの関心が高まっています。関連事業やパーティー、イベント、セミナーなどが本当にたくさん開かれるようになりました。そして、私の男性を性的対象化した視覚表現は、韓国ではあまりなかったものなので多くの女性の共感を得ました。

「女性によるアダルト雑誌」の難しさ

ーー現在は、ZUZNの発行を停止していますね。

私の作った雑誌はインディペンデントの雑誌の中でも売れ筋の中に入っていました。ある時は、インディペンデント雑誌界で販売率1位になったりもしました。しかし、それだけでお金を稼いで生計を維持することは難しかったんです。制作にだけ没頭したかったけど、収入に余裕がありませんでした。

そんな中、私は「一緒に仕事をしたい」と近づいてきた人に強姦被害を受けました。そして、その人は私の口を封じる為に、私の雑誌を「わいせつ物」として警察に申告したんです。警察に家宅捜索をされ、私は調査を受ける事になりました。恐ろしかったし、怖かった。そして、その調査期間中は活動をすることができなくて、お金が一銭もありませんでした。韓国社会で私の制作活動が受け入れられるのは、とても困難でした。女性として、このような作業を継続することは危険度が高くあまりに険しかったんです。しかし、だからこそ成功させたかった。
そんな中、ある会社が「この雑誌を商業的に販売しましょう。この雑誌を買います」と名乗り出たので、私はすべての版権を売りました。そして、当面はお金を稼ぐことに集中するために、新たなビジネスを開始する事にしたんです。

女性に「自分のためのプレゼント」を

ーー新しく立ち上げたブランドPuxxy Berryは、どのようなブランドですか?

ZUZNマガジンは、商業面よりも芸術的な側面にはるかに焦点をたくさん合わせたものでした。しかし、まだ韓国の人々は、アートを所有することや、芸術的価値に投資する事に対して消極的な側面があるようです。雑誌には多くのファンがいましたが、私の収入には余裕がありませんでしたし。そこで、「韓国の人々は自分の生活の中でより実質的に必要な物に対してなら積極的な消費活動をする」と思って、ZUZNが持っていた哲学の価値をそのままに、女性のためのセックストイ(アダルトグッズ)ショップをオープンしたいと思うようになったんです。

ーー制作したセックストイに対する女性たちの反応はどうでしたか?

女性たちは、思ったよりも可愛くきれいなものより実質的な機能を重要視しているようでした。非婚、非恋愛を提唱する最近の韓国女性たちにとって、セックストイは必需品であるという考えをより強くしました。服や化粧品とは違って、誰かに見せるために使うという感覚よりも、本当に自分自身のために贈るプレゼントのような感覚なのだと思います。だからこそ、より良い製品を販売したいと考えるようになりました。

これからは「誰か」ではなく自分自身がロールモデル

ーーセクシュアリティをテーマに活動・表現をしている方で、注目していたり影響を受けた人物はいますか?

正直、今はいないです。以前は、好きな女性アーティストや影響を受けたアーティストも多かったのですが、今では彼女たちにも限界点が見えて、少しスランプに陥っているような状況だと思います。

むしろ、アメリカのフェミニズムポルノを作る会社や、日本の女性たちをターゲットにしたポルノを作る会社の活動のほうが、今はアーティストよりも尊敬できるような気がします。

芸術は多くのことを変えることができるとまだ信じてはいますが、容易ではないようです。

好きな表現者がいるとすれば芸術家のチャン・ジア、そして舞踊家のチョン・クムヒョンが好きです。それ以前には、ソフィ・カルやルイーズ・ブルジョワのようなフランスの女性アーティストが好きしたが、今はそれほどでもないですね。シンディ・シャーマンやNikki S. Leeのような、自分をモデルにしたセルフポートレイトの写真家たちの影響も沢山受けました。今こそ新しいロールモデルが必要かと思いますが、現時点ではいません。これからは自分自身がロールモデルのようです。

ーー今後の活動を通じて実現したいこと、表現したいことがあれば教えてください。

私はいつでも、女性たちがより良い人生を生きていくことを最大の目標にしています。特に韓国社会では女性として生きていくこと、セクシュアリティを表現して暮らすことがとてもとても難しいので、なおさら、そのことについて話し続け、行動したいです。これは多くの女性たちのためでもありますが、同様に私の個人の幸せのためでもあります。かっこよく自由に、自分自身を失わずに生きていきたいですね。


DURIMIMI
instagram
ZUZN MAGAZINE
Puxxy Berry


写真=Lee Jeongmin
ヘア&メイク=Gu SungEun
取材・文=Tanaka Erina(Erinam)

#CULTURE

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