兄弟で鳴らす真っ直ぐなロックンロール Kitty, Daisy & Lewisインタビュー

先日、Kitty, Daisy & Lewisという3兄弟によるイギリスのロックンロールバンドがツアーのため来日していた。彼らが鳴らすヴィンテージサウンドは海外ではもちろん、日本国内でも評価が高く、甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)やチバユウスケ(The Birthday)、EGO-WRAPPIN’らからも厚い支持を集めている。
彼らのアナログへの思いや兄弟バンドのあり方を通して彼らの魅力に触れてみたい。

左からデイジー、キティー、ルイス

Kitty, Daisy & Lewisは、イギリス・ロンドンを拠点に活動するロックンロールバンド。長女デイジー(29)、長男ルイス(27)、次女キティー(24)の3兄弟は、30年以上マスタリング・エンジニアを務める父と、ポスト・パンクバンドのレインコーツのメンバーとして活躍した母のもとに生まれた。幼少の頃からルーツ・ミュージックに囲まれていた彼ら。家にあるギターやピアノを触っているうちに自然と楽器の演奏ができるようになり、10代前半の頃、当時よく出入りしていたパブでたまたまステージに呼ばれ3人で演奏したことからバンド活動がスタートした。自然発生的に始まった兄弟バンドは2008年にデビューし、昨年9月には4枚目のアルバム『SUPERSCOPE』をリリース。
キャリアを重ねバンドとしても個人としても成熟してきた彼らに、改めて音楽観やアナログへのこだわり、兄弟の関係を尋ねてみると、彼らの自由で快活な音楽がより身体に染み込んでくる。



――前作『The Third』は初めてプロデューサーを招いての制作(元ザ・クラッシュのギタリスト、ミック・ジョーンズ)であったり、ストリングスやホーンによる賑やかな楽曲が多いなど、特徴的な作品でしたが、今回はセルフプロデュースに戻し、シンプルでライブ感のある作品になっているかと思います。前作からの心境の変化や今作で大事にしたことがあればおしえてください。

キティー プロデュースの仕方で言えば、前回も基本的には自分達の好きなように進めたわ。今まで3人でやってきた中で、人とやってみるとどうなるかということに興味があったからいい経験にはなったけど、今回は自分達のやりたいことがはっきりしてたから、自分達でやった方が作業も早いってこともあってセルフプロデュースに戻したの。

ルイス サウンド面では「シンプル」ってことを大事にしたね。前作は賑やかな曲が多くて、今回もストリングスやホーンが入ってはいるけど、もうちょっとそぎ落としたアレンジがいいのかなと思ってこういう音作りになったんだ。

デイジー オーバーダブ(多重録音)をやってると、夢中になって音を増やそう増やそうとなりがちなんだけど、今回は歯止めをかけて、「小は大を兼ねる」の考え方でやったの。

――そのアイデアはどこから得たものですか?

デイジー 70年代の音楽、特に女性がやっているロックミュージックを最近よく聴いてたんだけど、ギター、ベース、ドラムの非常にシンプルな編成でやってるからこそ出せるエッジの効いた音があると思ったの。演出を過剰にするとエッジの効いた音が埋もれてしまうから、それを避けたかったのはあったかな。

キティー でも曲によるよね。「Slave」みたいな曲は割りと時間がかかった。ホーンやストリングス、バッキングボーカルとかパートがたくさんあって、構成も複雑だから。でも、そうかと思うと「Team Strong」みたいな曲になると、余計なことはしない方がいいと思って「間」を大事にする作り方にしました。

――そういったアレンジも含め、曲作りはどうやってるんですか?

キティー 基本的に曲は別々で書いて持ち寄ってるわ。初めの頃はカヴァー曲が多かったからオリジナル曲を作ることも少なかったけど、一緒に曲を書くってこともやってたわ。

ルイス 持ち寄ったらそれぞれ聴かせあって、そこからは役割分担とかはなく、みんなイコール。アレンジも含めてみんなでやってるよ。

キティー 今回はデイジーが妊娠してた時期があるんだけど、その時はルイスと2人で作業を進めることが多かったわ。私がギターやドラムを録っている時に、ルイスがコントロールルームにいて、「今の良かった」とか、「もう一回やって」とか。それは立場が逆転することもあって。私とルイスは目指してるところがある程度一致してると思った。

デイジー それで私はミックスがある程度終わってから聴きに行って、確認しながら進めてた。「これはダメ」って判断はみんな一致するの。アレンジが良くないってなったら、曲を書いた人の中にあるイメージを伝えてもらって、みんなで理想に近づけて完成させていくのが最近のやり方ね。

――進める上で意見がぶつかることはないんですか?

ルイス 昔は、「私はこうしたい」「僕はこうしたい」って言い出して結局決まらないってことがよくあったけど、今回あたりまでくるとお互いにどんなことをしたいかが分かるから、自分がどこで弾けばいいかも分かる。そういう面で余裕が出てきたから。

――同じ環境で育ったからこその関係性だと思いますが、それゆえに新しいアイデアが出づらくなるということはないですか?

キティー もちろん子どもの頃は同じものを聴いて育ってたかもしれないけど、その後の好みは枝分かれしていったと思うから。例えば、家にいてもルイスの部屋から聞こえてくるものを私が知らないことはあるわ。そこから新しい音楽に出会うこともあるから、共通する部分とそうじゃない部分があるわね。

デイジー 私なんかスパイス・ガールズを聴いてた時期もあるし、UKガラージに逃げ込んだ時期もあるわ。だから今は、それぞれの時期に聴いてた音楽の良いとこ取りになってると思う。
でも、人間の好みなんて変わるのよね。昔はインタビューで、「歌詞なんかどうだっていい。グルーヴが一番大事」とか言ってたけど、今は全く逆。好みは変わるものよね。

キティー 聴く音楽は気分次第だから日によって違うけど、今はヒップホップをよく聴いてる。作ってるものと全く違うものを聴いてみたりしないと飽きちゃうから(笑)。

デイジー 私も気分次第。キンクスとかローリン・ヒルとか……その時の気分次第だけど、最近は家ではあんまり聴かない。昔はずっとヘッドフォンをして聴いてたけど今はi Podも持ってないわ。

――ルイスさんはどうですか?

ルイス 毎日同じものを聴いてるってことはないけど、15歳くらいから同じものを聴いてるかな。ブルース、ジャズ、ファンク、ヒップホップ、ディスコミュージック……。その時一緒にいる友達が聴いてるものとかでも、良いものであればなんでもありだね。

制約を楽しむことがアナログの醍醐味

――良い音楽であれば分け隔てなく聴くということですが、ルーツミュージックが根底にあり、機材もヴィンテージのものにこだわっていると思います。アナログの良さはどこにあると考えますか?

ルイス そもそも自分達の機材があったというところから始まったものなんだけど、どっちが良いというものではないと思う。テープで録るか、コンピューターで録るかが問題なんじゃなくて、何を作りたいかというのが一番の問題なんだ。
コンピューターを使えばいろんなことができる。例えば、同じ曲を5本録って、このテープのこのドラム、このテープのこのギターというのを取り出して、編集して、最終的に一つのものに仕上げる。コンピューターだったらこれが可能だけど、アナログはそれができない。でも、僕らはそのできない制約を逆に楽しんでいたりもするんだ。それがアナログの醍醐味の一つだと思う。

デイジー それに音の個性っていうのは、アナログの世界の方が追求できるがするの。もちろん、デジタルにはデジタルの良さがあるとは思うけど、そっちは機械が音を決めてしまうところがあるような気がする。アナログの方が弾いている人の個性が反映されているような気がするのよ。

ルイス 例えば、ジミヘンとかキンクスとかT-REXとか、ああいう人達の音が今作れない理由は、ミュージシャンの持ち味をアナログが引き出してるからだと思う。デジタルだとそうは行かない。そこの違いなんじゃないかな。
でも、別にマインドをクローズして他のことを受け付けないって言ってるわけじゃない。音楽によってはデジタルの方が生きる音楽もあると思うし、必要であればデジタルも取り入れるけど、僕らはまだアナログの世界でも進化できると思ってるんだ。

――今回は何か新しい試みはありましたか?

デイジー 今回はクリックトラック(メトロノーム)を使ったわ。

ルイス 今回はみんなで同時に演奏するんじゃなくて、別々に録って音を重ねたんだ。その都合上、特にドラムはきちんと録らないと後からズレてしまうからクリックトラックを使った。レコーディングの手法が変わったから、それに伴う必要な変化だったね。
あとは、いろんなエフェクターを使ってみて、リバーブのかけ方を変えてみたり。そういうやり方を模索することが楽しみの一つだったりもするね。

――そのあたり、ご両親からの影響や助言はあったりしますか?

キティー 父は70年代の後半にアイランド・レコードでエンジニアとして仕事をしていたから、当時こんな人がこんなレコーディングをしてたよ、みたいな話とか。

ルイス 僕は割りといろんな情報を集めるタイプだから、父親が経験したそういう話はありがたいね。あとはビジネス面で父親が関わってくれることも多いかな。今は音楽もビジネスも一緒くたになってるから、「音楽の話だけしようよ」って時もあるけど(笑)。

デイジー 本当だったら音楽だけやってたいとは思うわ。

ルイス でも、もっとバンドを大きくしたいとも思うから、家族で力を合わせてこれからもがんばっていくよ!

Kitty, Daisy & Lewis
長女デイジー、長男ルイス、次女キティーの3兄弟によるロックンロールバンド。
ブルースやカントリー、ロカビリーなどのルーツ・ミュージックに傾倒しつつも、現代のセンスで常に新しいヴィンテージサウンドを奏でる。2008年にデビューし、現在までにシングル10作品、アルバム4作品をリリース。
Kitty, Daisy & Lewis


写真=田中 利幸
取材・文=組橋 信太朗

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