かつおちゃん回遊記vol.02〜高知県「おおまち」の美味しい暮らし〜(前編)

かつお節を愛し、かつお節に生きる「かつお食堂」店主“かつおちゃん”こと永松真依さんが、日本各地を回遊しながらかつおとかつお節の魅力を再発見する連載。
連載内での初めての回遊先は高知県。多くの人が「かつおと言えば高知県」というイメージを抱くだけあり、そこにはかつおにまつわるストーリーがありました。

かつお節を巡る旅はかつおを巡る旅

記念すべき初がつお(初めて)の回遊。「かつおの産地」と聞いて多くの人が思い浮かべるであろう地域……そう、高知県へ行ってきました!

高知県は「県の魚」にかつおを指定(1988年6月21日制定)していて、お刺身はもちろん、全国的にも有名な「かつおのたたき」のファンの方も多いのではないでしょうか?

そんな高知県内外で愛されるかつお。そして、かつおの生魚(せいぎょ)はかつお節の元。

つまり、かつお節を巡る旅は、かつおを巡る旅でもあるのです。

まずかつおを感じ、その魅力を知ることから始めることで、より深くかつお節の魅力を探っていきます。

高知県と言っても港町はたくさんあります。その中で選んだ場所は「カツオ一本釣り日本一の町」を掲げる「土佐佐賀」。右よし、左よし、カジキよし!(かつおの大敵カジキがいるかいないかの確認)それでは高知県への回遊のはじまりはじまり~。

「かつお一本釣り日本一の町」土佐佐賀の暮らし

JR高知駅から電車に揺られること1時間30分、高知県の西南部に位置する土佐佐賀へ到着しました。

駅を降りるといたるところに「カツオ!カツオ!カツオ!」の文字……。そりゃあもう大興奮!

四万十川に近いこの町は、江戸時代よりかつお漁が盛んで、かつお一本釣りの歴史は400年以上の伝統があります。

今も土佐佐賀の港を母港とし、九州、東北、北海道近海まで回遊をするかつおを追って、この土地の男性たちは漁に出ています。

2月から11月頃まで続きます。1年の大半をかつお漁に捧げる男性たち……正に勝男(かつお)!

彼らが家に帰るのは年に2~3回ほど。そんな勝男たちが留守の間、家族、そして町を守り支えるのは女性たちです。

男性が安心して漁に出て航海安全・大漁できるように、女性たちは力強く暮らしています。

自主防災のために女性消防団を立ち上げたり、漁協婦人部が中心となり佐賀漁港脇に「カツオふれあいセンター黒潮一番館」(かつおのたたき作り体験ができる!)立ち上げて、その上センターの運営も漁師の女将さんで行ったり。本当にたくましく町を守っているのです。

男衆は漁へ。女衆は留守を守る。そんなスタイルが根強く生きる土佐佐賀。

今回お邪魔した漁家民泊「おおまち」さんにも、その伝統は受け継がれていました。

漁家民泊「おおまち」のルーツは江戸時代

ご挨拶を交わす中で伺った「おおまち」という名前の由来。ここにも土佐佐賀の歴史が隠れていました。

遡ること江戸時代!

ある夏の日、この町を台風が襲います。猛威を振るった台風の被害は大きく、当時から漁師町として栄えていたこの町の船という船はすべて流されてしまいました。
「もうダメだ……」と町の人々は途方にくれました。

そんな町の危機に立ち上がったのが「大町九兵衛」という一人の男。
庄屋である彼は、洪水によって流れてきた城の各印が押された材木を見つけ、その材木で船を作ります。そのおかげで再び漁ができるようになり、徐々に元の生活を取り戻していきました。

ところが! そこへ現れた役人が「その船は城の各印が押されているではないか!」と言い出します。

「盗人だ!けしからん!!」

大町九兵衛に白羽の矢が立ち、彼は切腹を余儀なくされてしまいます。

自分のことより町のためを思い取った行動が、なんとも悲しい結末を招いてしまいましたが、町の人々は彼の素晴らしい精神を後世にも伝えていくため、切腹を余儀なくされた命日である8月24日に毎年祈りの祭りを行なっています。

土佐佐賀の人々が大切にする大町九兵衛さんの名前から「おおまち」という名前は付けられたそうです。

20年間かつお漁船に乗ったお父さん

大町さんの精神を大切にし、この町で生まれ育ったお父さん(初めてお会いしたのに温かく出迎えてくれたお父さんのような存在の好久さん。お父さんと呼ばせていただきます!)。

「当時の憧れはねえ、畳の上でゴロゴロ寝っころがりながら、カエルの鳴く声を聞くことだったなあ」と目を細めながら話すお父さんは、かつて近海のかつお一本釣り漁船に20年間乗船していました。

しかし、船の上での生活はやっぱり過酷らしく、乗船して1年間は血を吐きながら船酔いと戦ったそうです。

私も今年の6月に伊良部島へ行き、漁船に乗りかつお一本釣りの経験をさせていただきましたが……このまま海に身を投げてもいいと思うくらい辛かった。

そんな過酷な環境で20年間かつお漁を続けてきたお父さんの言葉には重みがあり、そのひとつひとつに尊敬の念を抱かずにはいられません。

長年乗り続けてきたお父さんが漁船を降りるきっかけとなったのは、当時まだ小さかったご長男の存在。海の上で打ち上がった花火が見えた時、「子どもも同じこの花火を見ているのかな」と思い、今しかない子どもの成長を見届けるために船を降りることを決意したそうです。

漁船を降りた現在も「泰央丸」というご自身の船で深夜2時頃にかつおを釣りに海へ出かけているそう。やっぱりかつおがこの町の生活に欠かせない存在なんですね。

お父さんが“魔法の手”で作る「かつおの藁焼き」

そんなお父さんが作る「かつおの藁焼き」は、ご近所の間でも一番美味しいと大人気!

お母さん(温和でお母さんのような存在の妙子さん。お母さんと呼ばせていただきます!)は、「お父さんはねえ、海の自然の厳しさを知っているから優しいんだねえ。美味しさはそんなお父さんの温かさが詰まった手の中にあるんだよ」と教えてくれました。

なんて話をしていたら、魔法の手を持つお父さんが「かつおの藁焼きたたき」を作ってくれることに!

「切れない包丁ではかつおに失礼だ」と、丁寧に包丁を研いだ後、手際よくかつおを捌いていきます。大ベテランのお父さんの軽快な手捌きにかつおも喜んでいました。

ちなみに、「かつおのタタキ」発祥については諸説あそうです。

ひとつは美味しく食べるための工夫という説。

高知県の漁師や港町では、新鮮なかつおが手に入るために基本的にはかつおをお刺身などで食べていたとされていますが、毎日刺身ではさすがに飽きが来てしまう……。そこで漁師さんの工夫により、刺身に塩を振って炙ったところ、非常に美味しかった! ということから始まったというもの。

もうひとつは衛生上の問題から生まれたというもの。

江戸時代は、多くの人がかつおを生で食べていましたが、かつおに潜んでいる寄生虫が原因で食中毒が横行し、かつおを生で食べることが禁止されたのです。しかし、どうしても生のかつおを食べたい! ということで、表面を明るく炙り、焼き魚と偽って食べたことで生まれた、という説もあります。

……いずれにせよ、かつおのタタキは美味しい! そして、藁で炙るとさらに絶品になります。

水分が抜けた藁を使うことで、かつおの表面だけを炙ることができます。そうすることで、水気を含まないカラッとした焼き上がりになり、中に旨みを閉じ込めることができるんです。

いやあ〜、365日食べる人間の食いしん坊の歴史が、この「かつおの藁焼きタタキ」には詰まっているんだなあ。

夫婦の美しい絆がかつおを美味しくする

さて、お父さんがドラム缶を設置し、中にふんだんに藁を詰めいよいよ始まりました。

まずは皮目を下にして炙りを開始。全体をまんべんなく炙るため、お父さんとお母さんが息を合わせて手際よく焼く面を変えていきます。

香ばしい香りが漂うと同時に、2人の姿に目を奪われ、言葉にはならないほどの美しさを感じました。

船でかつおを釣るお父さんと、その帰りを港で待つお母さん。2人の息の合った姿が、かつおの美味しさをさらに引き出しているに違いない。

感動しているとあっという間に炙りの工程は終わり。炙ったかつおはすぐに冷水につけ火が身の中に入るのを防ぐ方法もありますが、お父さん流の藁焼きは、冷やしません。

香ばしくカラッと焼いた表面と刺身状の内面。この最高の身質をキープするためにさっきまでの雰囲気と一変! ここからはスピードが命!!

炙ったかつおをそのまま切っていき、素早く塩をかつおに振りたたきます! そして、ねぎを散りばめ醤油を手の中に受けながらかつおをタタキ染み込ませていきます。

「さあ、できるよ!!はい!早く食べて!」

「はっ、はい。……あれ、箸は?」

「そのまま摘んで食べるのが美味いんだよ! 早く!」

お父さんに言われるがまま、まな板の上で輝くかつおの藁焼きを一枚摘み、脇に添えてあるニンニクをのせ、そのままガブリッ!

「うわああ!!!!!!」

あの衝撃的な美味しさと感動は忘れません! 原稿を書きながらよだれが出てきました……。

美味しいかつおを美味しく食べて喜んでもらいたい。お父さんのその姿勢は最高の幸せを感じさせてくれ、冒頭のお母さんの言葉の意味を実感しました。

ちなみに私、かつおの半身を一気にいただきました……!

漁師直伝「かつおのタタキ」&「漁師めし」

この感動をみなさんにも味わってもらいたいとお父さんに伝えたところ、藁焼きはなかなかできないだろうからと「自宅で作れるかつおのタタキ」と、お父さんが船上の生活で楽しみにしていた「漁師めし」のレシピを教えてもらいました。

【自宅で作れるかつおのタタキ】

●材料(2人前)
 刺身用のかつお 300g
 塩       少々
 醤油      少々
 お好みで青じそ、
 万能ねぎ    少々

●手順
1.フライパンを強火で熱する
2.油を薄めにひき、フライパンに馴染ませる
3.かつおを皮目からさっと焼く
4.表面にこげめがついたら、素早く切り塩を多めに振り馴染ませる
5.青じそ、ねぎ(薬味はお好み)を散りばめ、醤油を一旦手の中で受けながらまぶして叩く


【漁師めし~湯かけ(かつお茶漬け)~】

●材料(2人前)
 ご飯       2人分
 刺身用のかつお  300g
 醤油       少々

●手順
1.かつおの刺身の表面炙る
2.米にのせる
3.湯をかけ醤油少々かける
4.身をほぐしながら食べる


秋は戻りがつおのシーズン。スーパーの鮮魚コーナーにも並ぶはずなので、実践してみてください。いつものかつおがぐっと美味しくなるはずです!

そうこう言っていると長くなってしまいましたが、「おおまち」で体験したかつおの魅力はまだまだあるんです。この続きは後編でたっぷりお話しようと思います。

それまでみなさん、花かつおな日々をお送りください!

(後編へ続く)
かつおちゃん回遊記vol.02〜高知県「おおまち」の美味しい暮らし〜(後編)


【店舗情報】
かつお食堂
住所:渋谷区渋谷1-6-4The Neat青山1F (bar&...miiiii内)
営業:平日9時~、土日祝10時~
   ※なくなり次第終了
   ※営業日はInstagramで告知
Instagram

bar&...miiiii
住所:渋谷区渋谷1-6-4The Neat青山1F
営業:17時~深夜、不定休
Instagram


写真・文=永松 真依

#FOOD

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