かつおちゃん回遊記vol.02〜高知県「おおまち」の美味しい暮らし〜(後編)

かつお節を愛し、かつお節に生きる「かつお食堂」店主“かつおちゃん”こと永松真依さんが、日本各地を回遊しながらかつおとかつお節の魅力を再発見する連載。
前編に続いて高知県の港町・土佐佐賀へ回遊。後編では、漁師を支える力強い女性の暮らしからかつおの魅力に迫ります。



私はかつお一本釣りの町、土佐佐賀の漁家民泊「おおまち」さんにお邪魔しています。

1日目はお父さんに「かつおの藁焼き」をふるまってもらいながら漁師の生活についていろいろなお話を伺いました。

2日目、朝6時ごろに目を覚ますと、外からにぎやかなお母さんたちの声が聞こえてきました。

外に出てみると、何やら畑で作業中。何かを摘んでいるみたいです。

「おはようございます! 何を摘んでいるんですか?」

「さつまいものツルだよ!」とお母さん。

さつまいものツルとは、葉とさつまいも本体を繋いでいるところで、さつまいもの根にあたる部分。

私は初めて見たのですが、金平や煮物など、ツルはいろんな料理に使うことができるそう!

下処理をしておけば冷凍して保存もできるので、お母さんたちは便利な食材として重宝しているんですね。

興味が沸いてきて、私も少しお手伝いさせてもらうことに。

腰をかがめながらツルを摘んで、摘んだツルの皮をすぐに剥いていきます。

「秋にサツマイモを掘る前、夏のこの時期にツルを摘むんだよ。畑を持っていない人も畑を持っている人のところでツルを分けてもらってね。みんな物々交換(笑)」

一緒に作業をしていると、お母さんが教えてくれました。女性たちがツルの皮を剥く姿は、この町の夏の風景なんですね。

「摘んだツルは、道端でね、みんなでおしゃべりしながらこうして皮を剥いて。みんなで協力して剥けば、あっという間だよ! 今日は何のおかずを作ろうかなーってそんな会話も楽しいね」

家庭によって、金平にしたり煮物にしたり、使い方はそれぞれで、味付けも家庭ごとで少しずつ違う。そんな情報の交換も女性ならではの会話です。

また、こんなことも……。

「この町には夕方になると『食べたかよー?』ってご近所さん同士で挨拶が飛び交う。漁師は自然相手の仕事だから生活が不安定だからね、お互いに今日もご飯を食べることができたのかを確認しあうの。その返答に対して、なんかこう……表情がいつもと違うなとか思ったら、家に呼んでご飯を分け合う。みんなそうしてお互いを助けあってね。『食べたかよー?』って、相手を気遣う心がこの町には溢れているんだよ」

かつお節についていろいろな本を読んで調べていて、漁師町のことを書いているものにも出会いましたが、こんな話はどの本にも載っていなかった。本には載らない大切なことが溢れている町に回遊できて、かつおの神様のお導きかも……なんて少し大げさなことも思いました。

無駄なく食べる、母の優しさ

膨大な量のツルを見た時は「大変そうだな……」と思っていましたが、お母さんの言うとおり、みんなでお話しながら剥いていると本当にあっという間に作業は終わりました。

その後もお母さんと話をしましたが、そこで感じたことは「女性の強さ」。

男性たちはかつおを追いかけて長い間漁を続けます。

そんな彼らが安心して漁に出かけることができるのは、留守の間の家庭と町を力強く守る女性たちがいるからこそ。お母さんたちの話ぶりや畑仕事をする姿勢、生活の様子を見ながら肌で感じさせていただきました。

そしてお母さんたちは優しさにもあふれています。

「おおまち」のお母さんだけでなくみんなが「お父さんたちが一生懸命釣って来てくれたかつおを無駄にはできない。最後まで食べきる」と口を揃えます。

自分たちは船に乗ったことがない。だから船酔いはもちろん、海の上での生活がどれだけ大変か、その気持ちを分かることはできない。

だけど……、だからこそ、例え不漁でも、「無事に帰ってきてくれてありがとう」とねぎらいの言葉をかけ、一生懸命釣ってきてくれたかつおを大事に最後まで食べる。

そこにはお母さんの知恵が詰まっていて、刺身で食べきれなかった分は、生節にしたり揚げ物にしたり、かつおの煮汁で煮ものを作ったりすることで、残さず最後までおいしくアレンジするんです。

お父さんとお母さんが息を合わせて作る「かつおの藁焼き」が特別おいしくなるように、様々な方法でお父さんが釣ったかつおを大事に最後まで食べる工夫を凝らすお母さんの思いもまた、かつおの美味しさを引き出しているんだと思います。

心を込めてかつお節を削る

私が「かつお食堂」で削るかつお節もまた、たくさんの人が協力することで出来上がるもの。作り手さんたちに感謝しながら心を込めて削ることで、本当の美味しさが伝わると信じている私の思いは間違いじゃないと改めて確認することもできました。

今回の旅で、かつおの美味しさを再発見できただけじゃなく、かつお節を削る毎日を改めて見つめ直す旅にもなりました。

最後までかつおを美味しく振る舞ってくださった「おおまち」のみなさん、ありがつおございました!

というわけで、今回の高知県黒潮町、土佐佐賀への回遊はこれにて終了。私はまた「かつお食堂」に戻りがつおして、心を込めてかつお節を削ることにしますが、最後にお母さんに教わったレシピを紹介します。

ぜひかつおに思いを馳せながら作ってみてください!

次回は、静岡県へ回遊して、いよいよかつお節そのものの魅力に迫っていきたいと思います。

それまでみなさん、花かつおな日々をお送りください!


【かつおの磯辺焼き】

●材料(2人前)
 刺身用のかつお  200g
 芋天粉      おおさじ4
 水        おおさじ8
 アオサ      適量
 塩、醤油     適量

●手順
1.刺身用のかつおに塩、醤油で下味をつける
2.水で溶いた芋天粉にアオサを入れて混ぜる
3.芋天粉をまぶして揚げる


【ツルの金平】

●材料(2人前)
 さつまいものツル 150g
 にんじん     1/2本
 油揚げ      1枚
 かつお出汁    50ml
 ごま油      小さじ1
 砂糖       少々
 醤油       少々

●下処理
1.ツルの繊維を剥く
2.鍋で沸騰させ塩をふった湯で、ツルを茹でる
3.摘んで少し柔らかいくらいまで茹でる
4.茹で上がったら水にさらす

●手順
1.ごま油をひいた鍋で
  ツル、にんじん、油揚げを炒める
2.全体に軽く火が通ったら、かつおの出汁入れて煮る
3.一煮立ちしたら砂糖と醤油を加えてさらに煮る
4.仕上げにごま油を少しふりかける


【店舗情報】
かつお食堂
住所:渋谷区渋谷1-6-4The Neat青山1F (bar&...miiiii内)
営業:平日9時~、土日祝10時~
   ※なくなり次第終了
   ※営業日はInstagramで告知
Instagram

bar&...miiiii
住所:渋谷区渋谷1-6-4The Neat青山1F
営業:17時~深夜、不定休
Instagram


写真・文=永松 真依

#FOOD

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