かつおちゃん回遊記vol.01〜はじめまして、初がつお!〜

かつお節を愛し、かつお節の魅力を伝えることに生きる「かつお食堂」店主“かつおちゃん”こと永松真依さんによる新連載。
かつおちゃんが日本各地の主要なかつお節産地を巡りながら、その土地に根付く食文化や人々の暮らしや歴史、受け継がれる技術、作り手さんの想いなどの魅力を再発見していきます。かつお節から始まる「食べる楽しさ」を感じてください。

スリスリスリ。

かつお節を削る音が台所に響き渡る。ふんわりとかつお節の香りが広がる。

かつお節削り器が台所の必需品だった頃、ご飯の支度はかつお節を削ることから始まっていました。出汁を取って汁物や煮物にしたり、少し醤油を加えておむすびの具材に使ったり、そのまま豆腐にふりかけたり。かつお節は様々な料理を支える縁の下の力持ちであり日本の食卓にはなくてはならない存在です。

そんなかつお節のことが私は大好きです。

美味しくて、魅力がたくさん詰まったかつお節のことを、多くの人に伝えたくて、去年の11月から「かつお食堂」を始めました。その場で削るかつお節をふんだんにかけたご飯、かつお出汁がきいた味噌汁と卵焼き。シンプルだけどかつお節の味と香りを最大限に楽しめる食事を楽しんでいただいています。

削らせていただくかつお節は全国を旅して出会ったもの。作り手さんの思いを写真や言葉で伝えながら、おひとり様ずつ、丁寧に育てられたかつお節を削らせていただいています。

今回の連載でも、泳ぎ続けるかつおのように全力でかつお節の魅力を語っていきます!

かつおちゃん meets かつお節

まずは私とかつお節の出会いの話を。

私がかつお節に出会ったのは25歳の夏。それまでは企業の受付の仕事をしながら、やりたいこともなく夜遊びに明け暮れていました。そんなある日、母に勧められて祖母のいる福岡県へ遊びに行くことに。

久しぶりに会った祖母は唐突に「一緒におばあちゃんの大分の郷土料理、だご汁を作ろう」と言うと、いきなり戸棚から削り器を取り出して削り出したのです。

「これは亡くなったおじいちゃんが結婚する時におばあちゃんにくれたんだよ」
「昔は一家に一台あって、ご飯を食べる前に削ってたんだよ」

なんてことも話してくれながら、祖母はかつお節を削り始めました。耳を傾けながら何気なく見ていた祖母(当時85歳)の姿。かつお節を削るその姿が美しかった。かっこよかった。

そして、作っただご汁が本当に美味しかった。削りたてのかつお節の香りの豊潤さ、味の奥深さと上品さ、そしてそのまま口にした時の滑らかな舌触り。すべてが今まで食べてきたかつお節と違っていました。

「かつお節の本当の味を知ることができた私はなんて幸運なんだ! これを人にも伝えたい! 私がやりたいことはこれだ!」と直感し、その日から私はかつお節のとりこになりました。

かつお節を巡る旅へ

東京に戻る予定を投げ出して、1週間祖母に料理を教わり、削り器を譲り受け、それを持ってかつお節を巡る旅に出ることにしました。

まずは、祖母のようにかつお節を削っている人に会ってみたい。行く当てなんてないけど、動かないと始まりません。

「とにかく田舎へ行けば会えるはず!」

そう思って、とりあえず都会とは反対方向に向かいました。

たどり着いたのは山梨県の田舎町。何軒か訪ねて、農家さんのところで畑仕事をお手伝いしながら、その延長で食卓を共にさせてもらうことに。

夕食の支度が始まった頃、満を持して私は持参した削り器を取り出す。

「懐かしいねえ」とお母さん。

昔話も交えながら削り方や道具の手入れの方法などを教わりました。やっぱりかつお節には人の心に響く何かがある、と確信したのを覚えています。

かつお節を削る人の次は、かつお節を作っている人の話を聞きたい、そう思って次は、全国のかつお節の作り手さんを訪ねる旅に出ました。南は宮古島から北は気仙沼まで約3年間かけて、できるだけたくさんの生産者さんに会いに行きました。

どこで、誰が、どのような思いで、どのようにかつお節を作っているのか。本で学ぶことも大事ですが、直接話を聞くことは重みが違います。ひとつ、またひとつとかつお節のストーリーを宝物として心にしまっていく中で、かつお節を感じるには現場に行って自分の身体で感じることが一番大切だということに気付きました。

その考えは今も大切にしていて、どんなに忙しくても作り手さんのもとへ向かう時間を作っています。

そして、作り手さんに会いながら、様々な土地を歩いていて感じたことがあります。

それは、とにかく汁物が美味しい! ということ。

きっと、かつお節から“本物の出汁”をちゃんと取っているからなんです。

3年間の旅は、かつお節を使う出汁の美味しさ、料理におけるかつお節の大切さを蓄積していく旅でもありました。

かつお節を削る日々の始まり

そうして東京へ戻ってきた私。

かつお節の魅力を伝えるためにはやっぱり食べてもらうのが一番近道だと考えていたところ、渋谷のバー「bar&...miiiii」の店主・PAPICOさんと出会い、朝と昼にお店を間借りして「かつお食堂」を始めることになったというわけです。

いつも支えてくれる両親、かつお節に出会わせてくれた祖母、美味しいかつお節を作ってくれる全国の作り手さん、場所を貸してくれているPAPICOさん。たくさんの人のおかげで毎日たくさんのお客様に召し上がっていただき、「心がほっこりする」「日本の味だ」「心に染み渡る」お客様より日々うれしい言葉をいただく中で、改めてかつお節の魅力を再確認する毎日を送っています。

……と、少し話をかつお節に戻します。

かつお節のルーツは縄文時代。古代の人々がかつおを食べることから始まりました。時代時代で姿を変え、江戸時代中期に今と同じようなカチコチとしたかつお節の形が完成。

江戸時代から数えても約300年、長い長い歴史をたどってきたかつお節が、食べて美味しいだけではなく、目には見えないけれど「温かさ」も届けてくれる。これってすごいことだと思いませんか?

どんどん便利なことが増える世の中で、かつお節を削るのはすごく非効率なことに思えます。でも、だからこそ今の生活のありがたさを感じさせてくれるし、手間暇をかける大切さも思い出させてくれるのです。

そしてかつお節を巡る旅の中では、丁寧に暮らす人や文化、歴史の存在をいつも感じてきました。きっと「温かさ」は意図的に作れるものではない。でも、長い歴史を持つかつお節はそれを私たちに届けてくれるのです。

今回の旅「かつおちゃん回遊記」。ポップなタイトルではありますが、私が大好きなかつおやかつお節が繋ぐ食の温かさを一生懸命伝えていきます。

食べるってなんだろう?

回遊先で訪ねるのはその土地で暮らすお母さんたち。お袋の味はお金では買えない。でも懐かしく美味しく、また食べたくなる。それってかつお節とそっくり!

初がつお!それでは回遊始まります!

【店舗情報】
かつお食堂
住所:渋谷区渋谷1-6-4The Neat青山1F (bar&...miiiii内)
営業:平日9時~、土日祝10時~
   ※なくなり次第終了
   ※営業日はInstagramで告知
Instagram

bar&...miiiii
住所:渋谷区渋谷1-6-4The Neat青山1F
営業:17時~深夜、不定休
Instagram


文=永松 真依

#FOOD

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