LGBTを理解し“アライ”を発信すること、アクションが世の中の空気を換える。タレント・MEGUMIさんインタビュー(後編)

“アライ”を発信すること、アクションが世の中の空気を変える。タレント・MEGUMIさんインタビュー(前編)

昨今、「LGBT」と同様に関心が高まってきている“アライ”。LGBTの人々を理解しようとする姿勢を持ち、社会的不利な立場を正すために、自分にできることを考えて行動する支援者を指す。米国から日本に伝わり、少しずつ広まりつつある“アライ”の活動は、芸能人やスポーツ選手など、多くの著名人の共感を得た。近年では著名人による“アライ”の発信がニュースになることも増えている。2018年5月に行われた東京レインボープライドでは、大トリに歌手・浜崎あゆみさんのスペシャルライブが行われたことも、著名人によるアライ表明が増えている近年の傾向を象徴するようだ。

前編では、MEGUMIさんが“アライ”として認識されたきっかけや経緯、そしてLGBTとMEGUMIさんの現在地点をお話いただいた。今よりもずっと前、“LGBT”という言葉自体の認知もほとんどなかった時代から、LGBTの方々から“アライ”として認知されているタレント・MEGUMIさん。後編では、LGBTイベントの今後、そしてLGBTと社会の繋がり方、個人には何ができるのかなど、LGBTとこれからのことを伺った。

聞き手:阿佐見 綾香(あさみ あやか)さん
電通ダイバーシティ・ラボ 研究員、株式会社電通 第2統合ソリューション局、チーフ・ソリューション・プランナー。本職であるマーケティングを専門としたプランナーの視点で、LGBTを中心として広がる消費に関する調査や研究を重ね、ダイバーシティに関する企業向け研修や講演、施策やアイデアなどソリューションを提供。みんなが楽しく暮らせるダイバーシティ社会の形成を目指す。

小さな“Fammunity”の役割があれば、大きな“Fammunity”の役割もある

阿佐見 ショップ経営のお話で、個人的な活動を行うこともLGBTとのインクルージョンに繋がるというミニマムな視点があったと思うのですが、大きなイベントであるTSSAやレインボープライドなどはMEGUMIさんからすると、皆さんが混ざれる場所っていう感覚になるんでしょうか?

MEGUMI やっぱりハロウィンにしても、日本人ってああいう開放的なイベントが好きだったんだなっていう感じじゃないですか。レインボープライドなんて、本当にいろんな人がそこにいて平和な空間が出来上がっていますよね。ミニマムなのは、もっとコアなところに訴えかけるようなことだと思います。大きなイベントはもっと幅広い人を自然に巻き込むようなことなのかな。日本では、いるだけで楽しくて、かつ派手な格好しても誰も何も思わないっていう場所がこれまで少なかったんだなっていうのを最近とっても思っていて、これからは、もっといろんな場所でできると皆がほぐれていくんじゃないかな。“なんだか分からないけど、なんかいる“みたいなことで最初はいいのかなって思いますね。

阿佐見 大きなイベントも、ミニマムな活動も、どっちも入り口として存在価値はあるということですね。

MEGUMI そうですね。どっちも必要だし、一人一人があまり考えすぎずにフラットに参加できるものがあればそれでいいんだと思います。

オフィシャルサイト「コラボレート」も“Fammunity”に

阿佐見 今回ご自身が“アライ”という存在だということを認知された上で、今後について考えられていることがあれば教えてください。

MEGUMI 今までとなんら変わらないですね。例えば自分の誕生日とかに、ドラァグクイーンの子に司会やってもらって、でも子どももいて、男性もいてっていうのは今までもやってきたことだから、これまでやってきたことがアライとしてのやっていることの一つだったんだなと今改めて感じました。あとはゲイの友達とものを作ったり、普通に遊ぶっていうこともあるだろうし、自分の肩の力が抜けたスタイルでワクワクしながら一緒にいろんなことができたらいいなとは思っていますね。

阿佐見 ものを作ったりっていうのは、どういうものになるんでしょうか?

MEGUMI お花で私の衣装を作ってくれたりとか。自分のサイトで「コラボレート」という企画ページを始めたんです。そこではアーティストをキャリアとか年齢関係なく、一般で募集して毎月作品撮りをしています。その中の一環でトシコちゃんっていうフラワーアーティストにヘッドアクセサリー作ってもらって、それを写真に撮ってもらったりしてアップしたりしています。コラボすると相手も喜んでくれるじゃないですか。

表現する場所ができるっていうことになるので。私自身も作品撮りをすると新しい自分を発信できる。しかも撮影した写真は販促なりポートフォリオなり自由に使ってもいいっていうことにしているんです。自己満足だけにならないようなサイトにしたいなって。よく思いついたなって思いますよね、自画自賛ですけど(笑)

阿佐見 影響力のある方だからこそできることですよね。

MEGUMI あとはこの年齢だからできることでもあると思うんです。ずっとこういうことやりたかったんだろうけど、20代前半だと形にできないじゃないですか。やっとできる歳になったんだなと思いますよね。

MEGUMIさんのウェブサイト「コラボレート」のトップページより

「個」を磨き発信する。受け身ではない努力を支援する

阿佐見 LGBTと社会の繋がり方が変容していて以前に比べると受け入れられる社会になってきていると思うのですが、今後さらに広がりを見せていくためにどういったことが必要だと感じますか?

MEGUMI すごく思うのはやっぱりYouTuberとかインスタグラマーの子たちがこんなに世の中に影響を与える時代になってきたので、個がどれだけ面白いことやっているかっていうこと。面白ければ、病気していようが、LGBTだろうが、性格悪くてもなんでもいいじゃないですか。だから「皆を受け入れよう」とかっていう「足並み揃えよう」といった日本人的な考え方で、そもそも分からないことを理解しろっていうのは無理なので。それを打ち勝つほどまでに、自分のことを発信することを一回考えることが、大事なんだと思います。個が楽しんで発信するということです。

受け身でいることがこの世の中は絶対NGだと思うし、なんでも楽しいことをやってみて、「結果的にあの人LGBTだったんだ」となればいいなと思う。あの人が作る帽子かわいいよねとか、あの人の喋り面白いよねとか、社会にこういう貢献しているよね、とか何でもいいんです。自分が好きなことを明確にして、それを世の中に「好きです」って濃く出した人がやっていける世の中になってきたんだなと思いますし、もちろん私自身も頑張らなきゃいけないなと思って色々なことを続けています。それはとても地味なことだとは思いますけど、少しずつ何かが変わってきているっていう確信があって、すぐに結果は出ないだろうけど、腐らず自分のことを発信し続けてほしいなと思いますね。そうすることで周囲の人たちもいつの間にか面白がってくれたり喜んでくれるから。

アライとは「様々な後方支援のカタチ」

阿佐見 私はMEGUMIさんに対して、TSSAに最初に司会で出られていたっていう印象ばかりがありました。8年前だからこそすごいと思っていて、私の周りの“アライ”としてLGBTイベントに来ているタレントさんは事務所に止められてアライとしての発信をできない方も結構多かったりしているので、すごいなと思っていたんです。MEGUMIさんは、発信力を持って世の中の空気を変えるっていうこともされているし、個々の個性を磨き上げるまでのサポートもされていて、自分の価値を発信できるまでもサポートもされているところが私としては“スーパーアライ”だなと思っています。

MEGUMI “スーパーアライ! さらに昇格した(笑)。

阿佐見 実は私、耳に障害を持っています。電通で働いていて、普通にビジネスシーンに出て行ってクライアントから見て不良品だと思われてもしょうがないんだと思った時があったんですよ。皆と同じ能力だけど耳が聞こえづらいプランナーなんて使ってくれっていうだけおこがましい。だとすれば、自分の力を高めていかないとって思って。そういう時もアライとして誰かが相談にのってくれたり、仕事を教えてくれたり、話を聞いてくれるだけでも救われるし、誰かがアライでいてくれることというか、そういう存在ってすごい大事だなって気付いたんです。

MEGUMI そうですよね、聞いてくれるって大事ですよね。

阿佐見 しかもその個性をすくい上げてプロデュースしてくれる場まで用意しているMEGUMIさんの活動はすごいなと思うんですよね。

MEGUMI そうね。もう事務所でもやろうかしらね(笑)。

阿佐見 アライっていうのはLGBTだけに限らず、いろんな形でいろんな後方支援の形っていうことですよね。例えば「あなたのアライだよ」と言われて、嫌な気持ちになる人もいないですからね。

MEGUMI そうですね。LGBTの枠にとらわれずに一緒になんかやりましょうっていう雰囲気が私のスタイルなんだなと思います。LGBTへの支援のカタチって、中にはちゃんと本当に支援している方もいらっしゃる。それもひとつの形だと思うし、また私が行動した例が、誰にとっても絶対的に良い案というわけでもない。やりやすくて楽しい支援の方法を、一回考えてみるのがいいと思いますね。もしかしたらそれは時間のかかることかもしれないけど、一回立ち止まって何が自分は好きかとか、どういう風に世の中と関わっていくとか。LGBTの人たちもストレートの人たちも考える時間っていうのは大事だと思いますね。私もこういうことやりたいなんて、何年もかかって思いついたことだから。そこは無理なく急がずって感じですね。

阿佐見 等身大で考え方の基礎部分がフラットなMEGUMIさんだからこそのアドバイスだと思います。

MEGUMI 事務所もいい意味で何にも言わないし、あのままぎゅーっと抱え込んでたら何もできなかっただろうなとは思います。私の周りに多くいるLGBTの友達は、彼らは彼らで社交的にやってるから、辛いこともあるんだろうけど人前では面白おかしくやろうねっていう最低限の強さみたいなのを持っていて、それを20年近く見ていると自然とフラットな感じになっていくんですよ。いろんな人たちが偶々ニュートラルに面白おかしくいてくれたから。それはすごく感謝していますね。

阿佐見 逆にそういう環境がなかったとしたら……?

MEGUMI 全然違ったんだと思います。「いや〜ちょっと私そういう出られないから」みたいな人になっていたかもしれないし、身近にいた友達が与えてくれた環境というのも、大きかったんだなと思います。

企業目線と個人のアライ目線、両端からのLGBTイベント考察

−−阿佐見さんは広告代理店の旗手である電通に勤務されています。レインボープライドやTSSAなど、企業は今に増してLGBTに関わるイベントを応援したいという声を上げやすい時勢ですが、ここでMEGUMIさんからは企業に求める役割、阿佐見さんからは企業目線で社会的な役割をお聞きできればと思います。

阿佐見 企業のLGBTというテーマに取り組むスタンスは、この数年で大きく変化しています。昔は、レインボープライドなどのイベントに出資はしていますけど、社名は出さないでほしい、という企業もすごく多かったんです。逆に社名を出しているのは、外資系企業を中心とした、もともとLGBT関連の施策が充実しているイメージのある企業ばかりでした。それが変わっていき、東京レインボープライドでは「あの会社も参加しているの?」と驚くようなナショナル企業の新規出展も毎年相次いでいます。

今や、企業が自社のイメージを守るためにLGBTを支援していることを隠す時代は終わり、LGBTを支援している企業が社会的な評価を得られる時代に変わり始めているということです。今度は企業協賛色が強くなってきているというネガティブな見方もあるんですけど、私としてはポジティブに捉えています。個人の力でできることもあれば、個人が集団になって組織ぐるみでアライになって、企業の力で実現できることはスケールが違うと思うんです。企業の力を持ってしてLGBTへの理解浸透、ダイバーシティ&インクルージョンをインパクト強く推進することも可能だと思うんですね。

MEGUMI へえ。それは、例えばどんなところですか?

阿佐見 例えば、岡山のストライプインターナショナルさんは都心だけではなく全国にとても多くの店舗をお持ちなのですが、各店舗スタッフの方がきちんとLGBTの知識を身につける研修を受けています。それだけでLGBTの理解や関心が加速的に変わっていくと思います。研修を受けた店舗が、誰にとっても訪問しやすい場所になるとか、そこからフレンドリーな空気を広げていくことが、企業発信でできると思っています。

今、全国にあるレインボープライドは、当事者団体主体で全部立ち上がっているんですが、企業主体でイベントをやって、そこにいろんな方を呼んでっていう場があってもいいんじゃないかなって思っていて、そういう場で影響力のある方がフレンドリーなことを発信していってくださると、それだけでみんなが参加しやすい場になりますし、そういったことをやっていければいいなと思っています。

MEGUMI そうですね。空気を大きく変えることができるのは企業さんの力だと思いますね。

阿佐見 それを実現させるために私たちも頑張らなきゃいけないということですよね。

MEGUMI 私も“アライ”と認識されていることを知りましたし、もっと考えなきゃと思います。

阿佐見 それぞれの役割というところで、MEGUMIさんが心がけられているようなミニマムだけど継続が力になるような活動、また企業が担うべき大きく空気を変えていけるようなパワーのある活動。それぞれの立場で最大限できることを考えていくことが大切ですね。私もLGBTをはじめとしてみんなの世界がより良くなるように、ひとりの“アライ”として豊かな社会を作っていきたいです。


ワイドでフラットな世界観で、LGBTと社会のあり方を見据えているMEGUMIさん。等身大でまず自分ができることを誠実に考え、それを実行に移すことが大切だという。対して企業も、皆が寄り添いあい協同することによって、インクルーシブな社会になるよう力を奮っているようだ。いつしか、誰もLGBTの枠に捉われず “アライ”の意味にあるような“結びつく”社会になればと願い、それぞれの支援のカタチを体現しているように思う。

写真=沼田 直之
取材・文=小野寺 淳
企画=阿佐見 綾香

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